最も過酷な貿易戦争でさえ、勝者と敗者が存在し得る。だが米航空機大手ボーイングと欧州同業エアバスへの違法な補助金を巡って15年続く係争では、誰も頂点に立つことはないだろう。
世界貿易機関(WTO)は2日、欧州政府がエアバスに違法な補助金を与えたとの従来の判断に基づき、米国が年間75億ドル(約8060億円)相当の欧州連合(EU)輸出品に報復関税を課すことを承認した。
今回の判断を機に米通商代表部(USTR)は、航空機や部品などを対象に、WTO設立以降で最大級の報復措置を発動する方針だ。これにより、ドナルド・トランプ米大統領が多面展開する貿易政策で新たな戦線が開かれることになる。
消費者や経済全体が時として保護主義的な政策にさいなまれたとしても、少なくとも保護される業界には恩恵がもたらされることが多い。しかし、それはボーイングには当てはまらない可能性が高い。