しかし、肝心要の文在寅(ムン・ジェイン)大統領を見ていると、同氏の関心は経済よりも左派政権の維持に向かっている。政府による本質的な意味で効果が見込める経済対策の発動が読みづらい中、韓国企業がアニマルスピリットを発揮し、新しい分野での成長を目指すことは一段と難しくなる恐れが高まっている。

デフレ懸念が忍び寄る
韓国経済

 今年夏ごろから、市場参加者や経済の専門家の間で、韓国経済がデフレに陥るとの懸念が徐々に高まってきた。PPIの落ち込みはこの見方に大きな影響を与えたといえる。7月の生産者物価指数は前年同月比でマイナス0.3%、8月は同マイナス0.6%だった。

 生産者物価指数は、企業が半製品や素材などを取引する際の価格が上昇しているか否かを克明に示す経済指標だ。企業間取引の価格が下落するということは、国内の過剰な生産能力の問題などが徐々に顕在化していることを示唆する。

 一つの例が中国だ。2012年初旬から2016年夏場までの期間、および、今夏以降、中国のPPIは前年同月比でマイナス圏に落ち込んでいる。

 これは、鉄鋼などの供給能力が過大となってしまったことの裏返しだ。PPIの上昇率が鈍化し、マイナスに陥ったということは、供給が需要を上回り、企業は過剰人員、過剰設備を抱え込んでいると考えればよい。その状況が続くと事業の採算性は悪化する。経済の成長にマイナスだ。

 その上、9月、韓国の消費者物価指数(CPI)は前年同月比マイナス0.4%に落ち込んだ。1965年の統計開始以来、消費者物価指数の上昇率がマイナスに落ち込むのは初めてだ。これは、韓国の内需が弱含んでいることの裏返しだ。

 PPIとCPIの推移をもとに考えると、企業と家計の両セクターで、支出や投資への意欲は低下しているものとみられる。すでに内需の後退とサプライチェーン再編により、韓国の自動車生産台数は、産業基盤の維持に必要な400万台割れが目前に迫っている(2018年の生産台数は402万台)。

 加えて、左派の文大統領の下、韓国では労働争議が活発化している。エレクトロニクス分野でも経営環境は厳しい。