「内発的動機」の驚異のパワー

OODAループが速い6つ目の理由は、自分で決めて動くことにあります。

誰かに押し付けられた目標や、組織のために動くのではないので、しっかりやり切ることができ、いち早く目標にたどり着けます。

オリンピックのシンクロナイズド・スイミングで5つの金メダルを獲得したロシアのナタリア・イシェンコ選手は、脾臓から酸素を供給するという普通の人間ではまず考えられないやり方で、長い時間水中で激しい演技を行っていました。

子どものころから来る日も来る日もプールで逆立ちして息を止めて運動するうちに、脾臓が発達したと考えられます。

しかし、同じ練習をしたロシア人選手が全員、同じ能力を持つようになるわけではありません。実際、イシェンコ選手とペアを組んだロマーシナ選手の脾臓は、彼女ほどの機能を持っていませんでした。

NHKのテレビ番組「ミラクルボディー」で2人の差を分析した田中ウルヴェ京氏と筒井香氏は、自己決定力の違いを指摘しています。

親のすすめで競技を始め、国家のために戦うようになるまでは、2人の動機づけは共通していました。しかし、ロマーシナ選手が「他者に勝ちたい」という域にとどまったのに対して、イシェンコ選手は「自分の可能性に挑戦したい」という域にまで達しました。

自身の内側から湧き出るモチベーションが肉体をも変えて、不可能を可能にしたのだと考えられます。

スーパーアスリートのように人体機能にまで影響を及ぼすことはなくても、自分でやりたいと思ったことなら人は頑張れます。
親から言われて始めた習い事は三日坊主で終わったのに、自分から希望したことだけは長く続いたという経験はありませんか。

これを「内発的動機」と言い、活動することで得る報酬やしない場合の罰に左右されずに、自由な気持ちでその行為自体を楽しむことで、活動の質が高まり、持続する力が強くなるとされています。

OODAループを使うのは、ほかでもない自分自身の内から湧き上がる願望です。その思いが強いほど、思考と行動のスピードは高まります。