台風15号に続き、東日本に大きな被害をもたらした台風19号。しかし今回、鉄道会社の計画運休の取り組みは、これまでになく成功したといえる。鉄道各社のアナウンスはおおむね適切だったし、台風15号で1万3000人もの旅客が孤立した成田空港も、台風19号では大きな混乱を回避できた。成功の要因はどこにあったのだろうか?(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)
計画運休成功の陰に
国交省の努力があった
12日から13日にかけて東日本を縦断した台風19号は、各地に甚大な被害をもたらした。台風19号は発生直後から急激に発達し、最大で中心気圧905ヘクトパスカル、最大瞬間風速80メートルまで勢力を伸ばしたことから、上陸が予想された関西・中部・関東地方では厳重に警戒をしていたものの、記録的な豪雨により、想像を上回る災害となってしまったのは残念である。
鉄道も橋梁の流出、駅の水没など甚大な被害を被ったが、施設の被害に対して人的な被害が発生しなかったのは、9月の台風15号に引き続き実施された計画運休の成果といえるだろう。
先月、台風15号の計画運休について、成果と今後の課題を指摘した(「台風で駅に乗客殺到の大混乱、鉄道計画運休の弱点は『運転再開』だ」参照)。今回の計画運休は、前回の課題をふまえてほとんど混乱なく完遂したと高く評価できるだろう。最大の課題とされた「運転再開」は、11日昼の時点でJR・私鉄各社ほぼ横並びで「少なくとも13日昼ごろまで運休」と発表する念の入れようだった。
結局13日は、私鉄は予定を前倒しして朝から運転を再開した一方、JR線は沿線の河川が氾濫危険水位まで上昇した影響で夕方まで運転再開がずれ込んだ路線もあったが、日曜日だったことと、各地の被害があまりにも大きすぎて、首都圏の鉄道の運転再開うんぬんの騒ぎではなかったことから、論点になることさえなかったのが実情だ。
台風15号からわずか1か月で計画運休の改善が進んだのはなぜだろうか。実は台風19号が接近する裏側で、国土交通省鉄道局安全監理官室は「鉄道の計画運休の実施についての取りまとめ」の改定作業を急いでいた。
前回の記事でも取り上げたが、国土交通省は昨年9月の台風21号や24号の計画運休を検証し、今後の計画運休のあり方を検討する「鉄道の計画運休に関する検討会議」を開催している。今年7月に検討のとりまとめが発表されるも、9月の台風15号の計画運休で運転再開が課題とされたことから、9月19日に改めて検討会議を開催し、運転再開に関する項目の改定作業に入っていた。
その矢先に現れたのが大型で猛烈な台風19号であった。国土交通省は改定を前倒しして、上陸前日の10月11日に発表。各鉄道事業者も改定内容に沿った計画運休に踏み切ったというわけである。まさにギリギリの対応であった。
とりまとめの発表から3ヵ月、台風15号からわずか1ヵ月で内容を見直し、実行に移すというのは、いわゆる「お役所仕事」ではできないことである。来年の台風シーズンを待つのではなく、すぐに来るかもしれない次回に備えて準備を進めていた点、また改定が成果に結びついた点も含めて、国土交通省と各鉄道事業者の担当者に敬意を表したい。