部下の行動をただ管理することがマネジメントだと思い込んでいる日本のマネジャーは多い。マイクロソフト、グーグルでエンジニアとして活躍し、現在は複数の企業で技術顧問を務める及川卓也氏が「壊れたルーター」と評する日本のダメなマネジャーの問題点と、本来あるべきマネジメントの姿について語る。
タレントやスポーツ選手のマネジャーと
管理職の本質は同じ
世間で「マネジャー」というとき、大きく2通りの捉え方があると思います。1つは管理職としてのマネジャー。もう1つは部活動などスポーツチームや芸能人を支える人としてのマネジャーです。
前者は上司と部下という上下関係のイメージ、後者はタレントや選手が主役で、マネジャーはその成長やパフォーマンスを支える役割を担うイメージが強いかと思うのですが、私はこの2つのマネジャーの本質が、実は同じなのではないかと考えています。会社の管理職においても、主役はチームメンバーであって、その成長やパフォーマンスを支えるのがマネジャーだからです。
小さなチーム、組織では自分も業務を遂行しながらマネジメントも行うプレーイングマネジャーが多いことと思いますが、それでもマネジャーになったら「タレントや選手のマネジャーと同じ役割を求められている」と意識しなければいけません。チームに属するメンバーは、個人としての能力を高めることでチームに貢献します。一方マネジャーは、組織全体の能力を高めることでチームに貢献するのが役割です。しかも中長期的な視点で、組織が成長し続けることが大切になります。
芸能人をマネジメントする場合を考えてみてください。マネジャーは会社としての収益のことだけを考えればよいわけではなく、タレントが進むべき方向性を示しつつ、本人のやりたいこと、成長したいことをかなえるようにマネジメントするでしょう。管理職も同様に、会社としての収益を考えながらも、部下のやりたいこと、成長を考慮しながら、方向性を示したり必要な人に会わせたりすべきです。
管理職の意味でのマネジャーには、“偉い人”というイメージが強いかもしれません。確かに責任ある立場ではあるのですが、縁の下の力持ち的な存在でもあるべきなのです。