部下を勤怠だけで評価する
上司はラクしているだけ

 評価軸の話に戻ると、日本の企業ではまだまだ年功序列が生きています。実際のところ、成果や会社の業績への貢献を反映して評価にメリハリを付けようとすると、真剣に評価する必要があるのでラクではありません。しかし私は、評価とは報酬を決めるために半年や年1回実施すれば良いというものではなく、リアルタイムで行われる本人の成長のための気づきの場と考えた方がよいと思います。

 最近、月1回、週1回など短いスパンで定例の1on1、上司と部下が1対1でミーティングをする形を取り入れる企業が増えてきました。本人の悩みを聞き、うまくいっているところはほめ、必要なところは指摘し指導することを繰り返す、というのはマネジャーの大切な仕事です。

 マネジャーの中には、そもそも評価ができていない人も少なくありません。本来マネジャーは部下をよく見て、適切なアドバイスをするなどして育てることが仕事のはずですが、評価ができないマネジャーは上しか見ていない気がします。例えば、部下の出社状況やどれだけの時間、会社にいるか、報告があったかどうかといった管理は定量評価のみで簡単ですが、それ自体はアウトプットには全く関係がないことも多い指標です。本当は業務に即した仕事を見なければいけないのではないでしょうか。

 部下をちゃんと見て、仕事の中身で判断しないのは、その方がラクだからです。評価を低くするときにも勤怠を理由にすれば、やりやすいのです。

 例えばパフォーマンスが良くない部下がいて、遅刻が多かったとします。一見、「遅刻が多いからパフォーマンスが悪い」とすれば評価しやすいように思えますが、真に業務を評価するならば遅刻を評価の言い訳にしてはいけません。遅刻そのものに対してではなく、「遅れて来ることによってパフォーマンスにどう影響を与えているか」を具体的に本人に伝えられなければ、適切な評価をしたことにはならないのです。

(クライスアンドカンパニー顧問 及川卓也、構成/ムコハタワカコ)