「マネジャーだから偉い」は
ジョブ型雇用では当てはまらない
職種と職位の概念として、英語には「Job Ladder」(ジョブ・ラダー:キャリアのはしご)という言葉があります。
グーグルをはじめとする米国大手IT企業では、エンジニア職やデザイナー職などの職種を中心に、並行した別の職種としてマネジャー職のはしごが設けられています。こうした職場ではマネジャー職としてキャリアをスタートすると、そのはしごの中で職位が上がっていきます。
エンジニアも職位が上がるにつれてチームへの貢献を求められ、後輩の面倒を見るなどマネジャー的な役割を果たすこともありますが、ここでは分かりやすさを重視して別のものとして説明します。
マネジャー職だけのジョブ・ラダーがあるということは、エンジニアやデザイナーなどの職種でも、職位がある段階に到達すれば同じ職位のマネジャーと同等に「偉い」ことになります。マネジャーだから偉い、ということにはならないのです。企業に対して個として貢献する技術者でも、高いスキルでチームを導き、組織への貢献度が高ければスタープレーヤーとして扱われます。
一方で日本の場合、Job Description(ジョブ・ディスクリプション:職務や役割を明文化したもの)を基に採用や評価を行うジョブ型雇用はあまり浸透していません。仕事に人を割り当てるジョブ型ではなく、採用した人に仕事を割り振るメンバーシップ型雇用が主流です。
メンバーシップ型では職務が限定されず、従業員は入社時と同じ仕事をずっと続けるとは限りません。その代わりに、所属する部門の事業が傾いたとしても異動などによって雇用は守られます。このため「職に就く」というより「会社に入る」という感覚の方が強く、人材の流動性は低くなっています。
こうした職種・職位の概念の違いが、マネジャーの役割の違いにも影響しています。ジョブ型雇用では「マネジャーは何をする人なのか」ということが、ジョブ・ディスクリプションに明記されています。専門職でなくマネジャー職でもディスクリプションがあるのです。マネジャーのジョブ・ディスクリプションは求人票としても機能しますし、採用・評価の基準ともなっています。