「そもそも社員が相談に来ないのです」

アンテナ機能の悩みと方策
「アンテナはしっかり張っているつもりですが、そもそも社員が相談に来ないのです」

 企業内にキャリア相談の組織を創れば、すぐに社員が信頼して本音で語ってくれる、というものではありません。

 最初は、その背景にどのような問題があるのか、本人が目の前で語っていることの裏側には何があるのか、話を丁寧に聴くことから始めましょう。また、上司と部下がそれぞれ別の機会に相談に来れば、客観的に判断しやすくなります。そのためには、まずキャリアコンサルティングの基本的な役割について「社内広報」をきちんと実施することが必要です。

 そのように活動を始めると、相談に訪れた社員が、「キャリアコンサルティングって人事部に自分のマイナスの情報を知られたり、退職させられたりするものではない。落ち着いて振り返ったり、これからのことを前向きに考えたりするチャンスをくれる場所だ」と周囲に言ってくれることが期待できます。社内で認知されるのに時間がかかることは、やむをえないところです。

 最初から「アンテナ機能があります」と宣言するようなことではなく、目指すべき一つの機能と捉えていただければ、キャリアコンサルティング組織の開設時に理想を追いすぎて悩む必要はありません。

 経営層や人事部門でも、過去には「あの人のところに行くと何でもわかる」ということがあった時代を覚えておられ、その意味がわかってもらえると思います。