「キャリアコンサルティング」といえば、学生に対する就職指導のイメージが強いかもしれませんが、企業にこそ必要とされています。現に厚生労働省はキャリアコンサルタントを国家資格とし、現在の4万人から10万人に倍増させる方針を打ち出しています。
 これは企業にとってなぜ必要なのか、どんなメリットがあるのか。その疑問に答えるのが浅川正健著『企業内キャリアコンサルティング入門』です。伊藤忠商事でキャリアカウンセリング室を立ち上げ、20年の現場経験を持つ著者がダイヤモンドオンラインでの連載を元に、実践スキルや組織づくりのノウハウを1冊にまとめました。その一部を紹介します。

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 2019年4月より、働き方改革関連法が施行され、いよいよ企業は適正な働き方への移行を始めました。残業時間の「罰則付き上限規制」や「有給休暇取得の義務化」など、いままでは業務の現状が優先される中で、ともすればなし崩しになりがちだった働き方に、厳しい制約が課されたことになります。

 2001年からキャリアコンサルティングの導入を進めてきた厚生労働省は、ここ数年、国を挙げての「働き方改革」に歩調を合わせる形で制度を推進、拡大に努めています。2016年4月から、キャリアコンサルタントは職業能力開発促進法の改正により国家資格となりました。

 キャリアコンサルティングとは、一般的には働く人がイキイキと仕事をすることを支えるための相談機能を指します。本書は、特に「企業内キャリアコンサルティング」を主題とし、その望ましいあり方と、実際のキャリアコンサルティング事例を解説することを目的として編まれました。

 私は、長く伊藤忠商事に勤務し、エネルギーを担当する商社マンでした。営業の現場から1990年に人事部に異動し、そこで早期退職優遇制度に関わるなどの経験をしました。そのような経験を踏まえて、社員がさまざまな悩みを相談できる機能を社内に持つことが必要である、との思いを抱き、会社に対して積極的な働きかけをした結果、2001年に「キャリアカウンセリング室」の設置を認められ、初代室長に就任しました。以後、紆余曲折もありましたが同室は、現在も5代目の室長のもと稼働を続け、毎年500件を超える相談を受けています。

 その後、2015年に私は定年退職によって同社を離れますが、キャリアコンサルティングの普及をライフワークと考え、多くの企業やキャリアコンサルタントにアドバイスする仕事を続けています。