「社員と会社の間で動けないでいます」
連携機能の悩みと方策
「連携どころか、『キャリアコンサルタントには、いったいどんな専門性があるんだ』『社員のトラブルに関してどこまで細かいことを知っているんだ。知っているなら全部オープンにしないで事件が起こったら責任が取れるのか』などと言われて、社員と会社の間で立ち往生しています」
かつては「連携を取る」と言うと、問題に対処するために関係者が招集され、それぞれの立場から担当責任を果たしているかどうかを検討することが議論の中心になりがちでした。
現場が困った時に、関係者(上司を含めた職場の社員、管理をする側、産業医、主治医、ご家族など)が連絡を取り合えるようになれば「連携」はスムーズに進みますが、最初の段階として、職場内に「信頼の輪」を広げていくことに集中することが肝要です。
「キャリア」「キャリア形成支援」「キャリア自律」「キャリアコンサルティング」への理解が広まっていないと感じたら、社内の要所要所に、また「人材」「モチベーション」「コミュニケーション」といったキーワードに関心が強い経営や枢要なポストの方を探し、相手の求めるスタイルで情報を提供していくことが大事です。
そのような輪の中で、キャリアコンサルタントが「現場がよく見えている、現場から頼りにされている専門家」として、聴くに値すると考えてもらえる存在になることが大事です。
周囲からの相談であっても、問題解決だけを目指すのではなく、「人材育成」から「提案」にまでつながるようないくつかの機能を意識したアプローチが望ましいと考えます。
そうした機能の広がりを持たせるためには、次のような「定例会」方式がお勧めできます。最初は週に1度、月に1度、30分だけでもいいので、「組織」すなわち会社全体や部門単位という視点と、「個」すなわち社員という視点で、異動、考課、採用や研修などについて現場から見えてきていることを語り、経営層や人事部門で進めようとしている人事施策について話し合えたら、経営層や人事部門と現場は密着した関係になっていきます。
また「産業医」や「主治医」「ご家族」とも連携することが大切なのですが、医療の世界やプライベートに入り込むことには高いハードルがあります。
とはいえ、私自身が十数年にわたって社員と1対1のキャリアコンサルティングを実施する中で起こってきたのは、信頼に基づいて本人から紹介されて「連携」につながることが多くなっていったということです。メンタルヘルスケアの大会に自社の産業医をお招きしたり、「企業研究会」講演資料に意見を述べたり、社内でのメンタルヘルスのセミナーにキャリア領域から一緒に参加するなどということがありました。
また、社外の企業で、組織内に新しい制度・機能を導入する企画・提案について悩みを持っている人事部員、キャリアコンサルタントの仲間同士の連携も大変貴重であり、重要です。
最後に、本当に大事な「連携」は、現場の「上司」を含めた社員と一緒になって、「イキイキした職場」を創り出すための率直なやりとりです。「相談に来る」「相談に行くように勧める」「決して弱い社員やトラブルのある社員が相談に行く場所ではないと話してくれる」。こうしたことも大事な「連携」「つながり」「きずな」だと考えます。