総合商社でキャリアカウンセリング室を立ち上げ、20年の現場経験を持つ浅川正健氏が思いを込めて上梓した『企業内キャリアコンサルティング入門』。最大の特徴は、実践スキルにとどまらず、組織の立ち上げにも言及している点にある。人事担当者やキャリアコンサルタントの悩みに浅川氏はどのようにこたえてきたのか、その一部をお届けする。

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 国の方針もあり、キャリアコンサルタントの有資格者も年々、着実に増えてきています。とはいえ、キャリアコンサルティングに対する企業の理解が右肩上がりに進んでいるわけではない、ということも指摘する必要があるでしょう。

 総論では賛成である、または、賛成とまでは言わないが、その必要性は理解できる。そのように考える企業経営者であっても、いざ「自社でも実践するか」という判断となると、積極的にゴーサインを出せるわけではありません。キャリアコンサルティングは直接的に利益に貢献しているとは言いにくいためです。コストセンターとしての活動と見られていることすらあります。

 そこから、熱意のある担当者の悩みが生じます。会社としての理解が進まなければ、社員の行動も変わりません。「キャリア相談のための部屋」が「転職を上手に勧められる部屋」であるとか、「不調な人が相談に行く部屋」であるという偏見を持つ社員や企業もまだまだ少なくありません。

 このような偏見を即座に解消する手立ては残念ながらなく、地道な実践を重ねるしかありません。少なくとも、「この部署は、どのような機能を果たすものか」を正しく理解し、あるいは周囲の理解を促し、その機能が「経営に資するものである」ことを納得してもらう必要があります。

 私は、2001年から伊藤忠商事でキャリアコンサルティングを進めてきた中で、その機能は次の六つであると考えるようになりました。

(1)アンテナ機能
(2)相談機能
(3)問題解決機能
(4)連携機能
(5)人材育成機能
(6)提案機能

 それぞれの機能の詳細は書籍で紹介しています。ここでは、①アンテナ機能と⑥提案機能について、キャリアコンサルタントの悩みと方策について考えていきましょう。