総合商社でキャリアカウンセリング室を立ち上げ、20年のキャリアコンサルティングの現場経験を持つ浅川正健氏が『企業内キャリアコンサルティング入門』(ダイヤモンド社刊)を上梓した。今回は仕事が合わないと嘆く若手社員にキャリアコンサルタントがどのように臨んだか、その実践スキルの一部を紹介する。

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 入社3年以内に3割が会社を辞めてしまうともいわれ、「早期離職」は企業にとって深刻な課題になっています。入社前の仕事についてのイメージと、入社後に経験する実際の仕事とのギャップ。初めて取り組む仕事ですから、事前の想像とピタリと一致するものではありませんし、多くの若手はそのギャップを受け入れて、折り合いをつけていくものです。ただ、それができずに悩み、退職してしまうケースも少なくありません。
 そんな時に、若手が気軽に相談できるキャリアコンサルタントが社内にいれば、仕事に取り組む考え方を新たにして、退職しない道を選べるかもしれません。

 私が実際に経験した相談事例を紹介します。相談者のプライバシーに配慮して、フィクション化したものあることをご了承ください。

社会貢献できない仕事に意味が見いだせないので退職したい

 相談者はAさん、20代前半の総合職の男性です。

面談のきっかけ
 Aさんは優秀で明るく、社内では将来を考えた次の異動先も検討されています。しかし最近、自分のキャリアに希望が持てなくなり、退職を考え始めているようです。Aさんの上司と、事業部の人事担当者から「相談に乗ってあげてほしい」と紹介されて来室することになりました。

主訴(本人がいちばん訴えていたこと)
「社会貢献できる部署に異動したい。それが実現できないなら、いまの仕事には意味が見い
だせないので退職したい」

キャリアコンサルタントの見立て
 Aさんの就職活動時の決断に至る過程、性格、行動特性、職場でのコミュニケーションにも問題がありそうです。また、上司の日頃の業務指示や、指導に際してのリーダーシップもAさんが退職まで考えることにつながっていて、このままでは精神的にも参ってしまう可能性があります。

キャリアコンサルティング方針
 まずは本人の話をじっくり聴くことにします。さまざまな角度から、これまでの行動、考え方を振り返る中で、自分を理解し、現状を分析し、どうなりたいのか、そのために何をしていけばいいのか、などを質問していくことにしました。

 その際に、メンタル面について、日頃の生活や周囲からのコメントなどを本人に確認しながら、将来のキャリアの可能性に触れていきます。

 ただし、Aさんを当室に紹介した関係者には、「キャリア相談の部屋は、退職を支援する場所ではなく、自分を見つめて前向きになるための場所」であることを事前に本人に伝えてもらいました。

面談1回目
「人事の方に紹介されました」とAさんが来室。

Aさん「入社してあと少しで1年が経ちます。いまの配属先は、内定時に希望していた通りだったのですが、就活時代に思い描いていた仕事とはほど遠く、ライバル会社と価格競争しているだけで、社会に貢献している気がしません。もう会社を辞めて他の企業に行きたいと思い始めています」