マルチ商法は後を絶たないPhoto:PIXTA

久々に連絡してきた友人と再会したら「マルチ商法」の勧誘だった――。そんな経験がある人は少なくないだろう。なぜ、マルチ商法に引っかかる人は後を絶たないのか。実際に“被害”を受けた人に話を聞き、問題の真相を探った。(取材・文/フリーライター 有井太郎)

出会いの場とともに
マルチとの遭遇も増えた

 マッチングアプリに街コン、見知らぬ男女が相席する居酒屋……。“出会い”をもたらすサービスが増える中で、筆者は思ったことがある。「マルチ商法」の勧誘の多さだ。

「この子は妙にトントン拍子で話が進むな」「じゃあ◯日○時に会いましょう」。最初は“勧誘”だと明かさない。いざ会って、2時間ほど話すと怪しい雰囲気に気づくのだ。

 実際に体験したエピソードを以下にいくつか載せてみよう。

・立ち飲みバーで話した子。LINEを交換した翌日、「明日、ババ抜き大会するから来ない? 勝った人が賞金総取りできるよー」と誘われた。文面に怪しさを感じ「それ、なんか勧誘されるんじゃないの?」と言うと返信がこなくなった。

・デザイナーを目指していた女性。かつて携帯電話のメアド変更で連絡したら「久々に会おう」と言われた。1時間後、紙に図を描きながら「今あなたは労働者。そこからコッチ(働かなくても稼げる)に来たくない?」と言われた。

・妙にLINEで「会おう」と誘ってくる子。怪しいと思い彼女のタイムラインをさかのぼると、大人数で同じ商品を手に持った写真。銘柄を検索するとマルチ商法大手のブランドだった。

・「ご飯に行こう」と誘われ、途中から勧誘に。後日、マルチ商法を否定するメッセージを送ると「頭カチンコチンか!」「あたしそんな低いレベルにいないから!」と罵倒された。

 大前提として、事前に勧誘する旨を告げず、いざ会ってマルチ商法の勧誘を行うことは、特定商取引法で禁止されている。しかし経験上、事前に知らせてきたケースはない。