出版不況の中で
書店の取り分の低さが焦点に

 書店としての看板を掲げながらも、店長としては、営業成績を上げなければならない。ある程度の規模の書店を回していくには、雑貨の比重を増やし利益を上げることが要求された。なんとか本の利益率を上げたいと思ったが、雇われ店長の立場で、取次を外し、出版社との直取引に切り替えることはできない。勢い、利益率のいい雑貨やコーヒーの売り上げに頼らざるをえなくなる。堀部の中では、そのフラストレーションが次第に膨らんでいった。

 それに耐えきれず15年夏に恵文社を辞め、その年の11月に誠光社を立ち上げた。

 大学時代から数えると20年近く書店に携わってきた経験を元に、個人の書店を立ち上げた。書店経営のいいところも、弱点も知り抜いた堀部だったからこそ、最初から直取引に取り組む気になったのだ。

 出版不況と呼ばれて、30年がたつ。

 書店数はピーク時の2万8000軒超から、現在はその半分以下の1万2000軒台に落ち込んでいる。中でも大手チェーン店より、街の個人書店の苦戦が目立つ。出版市場全体を見ても1996年の2兆6000億円台から1兆5000億円台まで縮小している。出版業界が右肩上がりの成長を続けているときなら問題とならなかった、書店の取り分の低さが、出版業界が縮む中で焦点が当たるようになった。書店の22%の取り分では、その経営が成り立たないのではないか、という議論だ。

 従来の商習慣では、出版社と書店の間に取次を置き、その取次が従来の販売データに基づき「見計らい配本」と称して、本を書店に送る。それを書店が店頭に並べ、売れなかったら取次経由で返本することができるという委託販売制度によって成り立っている。物流機能と金融の決済機能を有する取次の存在については、昔から賛否両論があるが、日本の出版業界の大きな特徴でもある。その取次を中抜きすることは、容易なことではない。

 書店が取次経由の取引を選ぶのは、年間7万タイトルという膨大な数の本が出版される中、1冊ずつ吟味する時間がなく、どの本が売れるのかを見極めることが難しいからだ。返品可能な委託販売は、書店を安全に経営していくための容易な手段を与える。しかし、その一方で、書店が「商品を選ぶ」という小売業の中核となる作業までを取次に任せてしまう矛盾を生み出す。

 では堀部自身は、毎年出版される7万タイトルから、どうやって本を選んで仕入れているというのか。

「僕は出版される本の全部に目を配っているわけではないんです。僕が得意とする、人文系の本のタイトルは年間5000冊ほど。そのうちの、どの本がうちの書店で売れるのかは、これまで20年の経験で培ってきた本を見る目で判断します。出版社のウェブサイトで新刊情報に目を通します。版元や著者、書影やタイトル――などです。その中でも一番大切な判断材料は書影です。本を選ぶ目は、前職で随分と鍛えられました」