よりよい教育環境を目指して、公立小学校の通学区域を意識して住む場所を選ぶ時代になった。だが、教育環境においてどこが優れた地域なのかを見極めることは難しい。そこで、ダイヤモンド・アナリティクスチームでは、人口や世帯、住まいや教育に関わるさまざまなオープンデータを用いて、東京・公立小学校区の教育環境力に迫った。特集「東京・小学校区『教育環境力』ランキング」では、今後の学校区選びに役に立つ情報をランキング形式でお届けする。今回は、教育環境を見極めるうえで重視した「小学校区の推計世帯年収ランキング」を都内49自治体別に一挙公開しよう。
小学校区の選択は
地域に住む「親」を選ぶことでもある
公立小学校の説明会の会場で、瀬尾真奈美さん(仮名)は学校の様子以外に気を払っていたことがあった。その視線は会場に来た親に向けられていた。頭からつま先まで、瀬尾さんはその身なりを観察していた。バックや靴を見れば「どんな親に育てられた子どもが通うのかがわかる」(瀬尾さん)ためだ。
朱に交われば赤くなる――。公立である以上、カリキュラムや教員に大きな差はない。だが、その地域に住む家庭は、学校の環境に大きな影響を与える。教育環境を選ぶうえで欠かせないのが、親が子どもの教育をどこまで熱心に考えている地域かである。
瀬尾さんはそれを十分に理解していて、会場に来た親の様子を見ていたのだった。結局、瀬尾さんの子どもは超名門私立小学校への進学を果たしたため、公立に進むことはなかった。だが、彼女のような親は、「熱心な親は熱心な親を引き寄せ、子どもたちはその影響を受ける」という環境の力をよく理解しているのだ。
親の熱心さを地域で見極めるのは難しいが、その1つの方法として、年収の高さがあるだろう。第1回の記事(東京・小学校区「教育環境力」ランキング【主要30自治体トップ3】)でもお伝えしたように、学力の高い地域と、その地域の世帯年収や学歴には関係がある。従って、年収の高い地域ほど教育に熱心な親が多い可能性が高いといえるだろう。
だが、年収に関する細かな公的データを手に入れるのは困難だ。そこで、われわれは今回、小学校区別の推計モデルをつくることにした。まずは、5年ごとに行われる総務省の「住宅・土地統計調査」(2013年)を基に、自治体別の世帯年収を推計した。
推計年収をランキング形式で示したのは次ページの通りだ。この調査は、年収を9階層別にして世帯数を公表しているため、推計値ではあるものの、比較的実績値に近いものといえるだろう。