冷静に考えたい
医療制度改革の「誰得」

 今回の国民健康保険料の上限額引き上げは、仕方なく認めざるを得ないものかもしれない。しかし、高度成長期の恩恵を受けて長生きできた高齢者に怒りをぶつける前に、怒りのターゲットを考え直す必要はないだろうか。

 2013年以後、水道や種子など日本の人々の生存にとっての重要な基盤を、日本と日本の人々のために保護するための規制が、次々に撤廃された。そして、必ずしも日本のために活動しているわけではない外国資本が参入している。地方行政や条例レベルでの抵抗は続いているが、国の政策に自治体が対抗することは容易ではない。

 そして日本国内では、「いくつかの企業に日本の人々のお金を渡す」と見るのが妥当と言える動きが続く。2020年度から開始される予定の「大学入試共通新テスト」は、幸いにも英語民間試験の導入が見送られ、大手業者への文科省からの「天下り」などの背景が明らかにされつつある。少子化対策が必要な日本で、子育て世帯の教育資金が業者に移動させられることは、それだけで弊害となるはずだ。

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 2018年から今年にかけては、「“貧困ビジネス”に対する経済的保護ですか」と言いたくなるような無料定額宿泊所政策が検討され、現実になりつつある。そのことが意味するのは、「生活保護費が貧困ビジネス業者の利益になる」ということだ。

 そしてもともと、精神医療の医療費の多くは、私立精神科病院の収入となってきた。そこには、国民健康保険料も生活保護費も含まれている。生活保護費のうち精神科入院費は、医療以外の日用品費などの費用を合わせ、国と自治体の負担分を合計すると、2500億円~3000億円程度の金額と見積もられる。1%の桁で四捨五入すれば、生活保護費総額の10%に達する。生活保護の医療費を本気で削減したいのなら、最初にすべきことは、「精神科病院からの、聖域なき退院促進」だろう。それは、国民健康保険料の負担にも、大いに関係している。

(フリーランス・ライター みわよしこ)