副社長が語るトヨタとの「格差」とは

 倉石副社長は言う。「トヨタさんは非常に良い決算だった。ホンダの四輪事業も、金融サービス事業に含まれる四輪の利益を積み上げれば、ホンダの四輪事業の営業利益率は5%程度(が実力値)。トヨタさんの9.2%との差は、ホンダの規模の割に大きな研究開発費に寄るところが大きい。量(規模)を追いかける勢いに圧倒的な差がある」。

 実際に、ホンダの研究開発費は激増している。創業以来、ホンダは売上高の5%を目安に研究開発費を投じている。20年3月期の研究開発費は8600億円(売上高の5.7%)となる見通しで、売上高に占める構成比も高まるばかりだ。

 一方のトヨタは、同期に1兆1000億円という日本一の規模の研究開発費を投じる予定。それでも、トヨタの売上高はホンダの約2倍なので、売上高に占める研究開発費の構成費は3.7%に抑えられているのだ。

 現在、自動車産業には、車の価値が根底から変わる「CASE(ケース。コネクテッド、自動運転、シェアリング&サービス、電動化)」と呼ばれる4つの技術トレンドの波が押し寄せている。ホンダもトヨタも、車を開発して生産して販売すると言う「ハードウエア」に偏ったビジネスモデルを、「ソフトウエアやサービス」へシフトしなければならない激変期にある。特に、CASE 領域へ投じる研究開発費は増える一方だ。

 ホンダもトヨタも技術の「自前主義」が強い会社として知られているが、近年、さしものトヨタですら完全自前主義からは脱却している。例えば、電気自動車向けの電池は全方位調達をしているし、半導体事業などをデンソーへ移管したりしている。

 では、ホンダはいかにして四輪事業を再建し、再び成長戦略を描こうとしているのか。

 目下のところ、ホンダ社内では大リストラの真っ最中だ。グローバルモデルの「派生数」を現在の3分の1に削減したり、地域専用モデルの集約も始めたりしている。

 それだけではない。リストラ対象はホンダ本体だけではなく、ホンダ系サプライヤー(部品メーカー)にも及んでいる。10月末には、ケーヒンなどホンダ傘下の部品メーカー3社を実質的に日立製作所へ身売りした。会見の席上、更なるホンダ系部品メーカーの再編可能性についても、「答えはイエス」(倉石副社長)と言い切った。

 自動車のビジネスモデルが、ハードウエア中心からソフトウエア中心へシフトする。そうなると既存のハード中心のサプライヤーピラミッドやディーラー網のリストラは必然である。トヨタならば慎重にならざるを得ないサプライヤー政策でも、ホンダには、生き残るために冷徹な経営判断を下せる側面はある。

 既存の技術や人的資産、ビジネスモデルを抱えたまま新領域へ踏み出すにはエネルギーがいる。ホンダは、良い意味でも悪い意味でも変化に柔軟で大方針を変える「朝礼暮改」企業。新しい領域に踏み込む強さは持っているかもしれない。

 トヨタは、資本とケイレツの力で半ば強制的に自動車メーカーや親密サプライヤーなどの味方に引き入れて「チームトヨタ」の勢力圏を広げている。ホンダは、トヨタとは違う「勝ちパターン」、つまり
提携戦略に依存しない必勝法を提示できるだろうか。