自動車の最終決断7 「ホンダ・日産」統合説
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SUBARU、スズキ、マツダなどとの協業体制を加速させているトヨタ自動車。これら“チームトヨタ”の販売台数は1600万台となり、「トヨタ1強」体制を築きつつある。だが、リストラ真っただ中のホンダと日産自動車がタッグを組めば、 トヨタ覇権と対抗できる勢力になり得る。折しも、ホンダと日立製作所が傘下の部品会社の統合を決めたことで、ホンダ系と日産系に強いメガサプライヤーが誕生する。特集「トヨタ、ホンダ、日産 自動車の最終決断」(全9回)の第7回は、部品統合でお膳立てが整ったかのように見える「ホンダ・日産」統合説について、22の経営指標を使って検証してみた。(ダイヤモンド編集部 浅島亮子)

ホンダ、日立との部品統合は
日産合流の“お膳立て”になる

 ホンダがついに、見切りをつけた。ホンダ系の自動車部品メーカー3社(ケーヒン、ショーワ、日信工業)をまとめて日立製作所傘下の日立オートモティブシステムズと統合させたのだ。ホンダの新統合会社への出資比率は33.4%にとどまるので、実質的な“身売り”ともいえる再編劇である。

 新会社の売上高は両社の合算ベースで1.7兆円となり、トヨタ自動車系列のデンソー、アイシン精機に続く国内3位の規模。もともと、日立オートモティブシステムズは日産自動車を主要顧客に持つユニシアジェックスやトキコを吸収合併してできた会社なので、ホンダ向けと日産向けに強いメガサプライヤーが誕生することになる。

 新会社の誕生をきっかけに、その重要顧客であるホンダと日産が接近する可能性は捨て切れない。

 目下のところ、ホンダの四輪事業と日産は収益悪化に苦しんでおり、共に大リストラの真っただ中にある。また、ビジネスの軸足を「CASE(ケース。コネクテッド、自動運転、シェアリング&サービス、電動化)」と呼ばれる新しい領域へ急激にシフトしなければいけない局面にある。そのため、ホンダのみならず日産もまた、系列部品メーカーの整理、売却を進めているところだ。

 今回のように、ホンダや日産が系列グループではやるべきではないと判断した事業・ビジネスについては、一層の効率化とコストダウンが求められるものだ。新会社を起点にして、ホンダと日産との間で部品の共通化や先進技術開発の協業といった動きが出てくるだろう。そうなれば、部品統合が本体統合の流れをつくる“お膳立て”になるかもしれない。

日産側にホンダ統合の
動機がある

 実際に、日産のある幹部は「資本の力で自動車メーカーを従属させた“チームトヨタ”の対抗勢力として、日産がホンダと連携することは非常に大きな意味がある」と秋波を送る。近年、トヨタはSUBARU、スズキ、マツダなど自動車メーカー5社との資本の結び付きを強化しており、そうしてできた“チームトヨタ”は販売台数が1600万台規模に及ぶ。「トヨタ1強」体制を築きつつあるのだ。

 八郷隆弘・ホンダ社長は、日産との統合の可能性について、「これまで自動車業界の歴史の中で、対等合併が成立したことはない。ホンダが経営の独立性を担保できない相手と組むことはあり得ない」と全否定する。

「ホンダ・日産」タッグの結成に持ち込みたい動機は、むしろ日産側にありそうだ。昨年11月のカルロス・ゴーン前会長の逮捕以降、日産を経営の支配下に置きたい仏ルノーとの間の確執は深まるばかりだ。20年続いたアライアンス関係に終止符が打たれる離婚のリスクがある。次に組む相手の候補としてホンダが浮上してもおかしくない。

 10月31日、欧米フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA。伊フィアットと米クライスラーの統合会社)と仏グループPSA(旧プジョーシトロエン・グループ)が経営統合することを正式発表した。

欧米FCAと仏グループPSAが経営統合すると870万台
欧米FCAと仏グループPSAの経営統合が実現すると、販売台数は870万台。「世界五大グループ」の一角を占める Photo:AFP/AFLO

 これにより、やはりFCAとの統合をもくろんでいたルノーは断念せざるを得ない。 今後、ルノーが日産の経営へのグリップをますます強めてくることは間違いない。日産にとっては、ルノー介入を排除する防衛策としても、ホンダと緩やかに協業する策は有効だ。

 何より、対抗軸なき「トヨタ1強」体制は自動車産業の活性化につながらない。もしもホンダと日産が統合したならば、チームトヨタを脅かす勢力になり得るのではないだろうか。