多様な商品やサービスが次々と登場する中で、いかに顧客から支持され続けるブランドをつくり上げるかが、企業にとって大きな課題となっている。著書『ブランド・エクイティ戦略』などで知られ、ブランド戦略研究の第一人者であるカリフォルニア大学バークレー校ハース・ビジネススクールのデービッド・アーカー名誉教授に、デジタル時代のブランド戦略の要諦を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 笠原里穂)
バブル崩壊後、地位を確立した
日本のグローバルブランド
――企業における「ブランド」の重要性を論じた『ブランド・エクイティ戦略』を上梓されてから、30年近くがたちました。当時、世界時価総額ランキングに名を連ねていた日本企業も、今はGAFAや中国の先進企業に遠く及ばずといった印象です。この30年での日本企業における変化をどう見ていますか。
ブランド・マネジメントの観点で考えると、確かに問題を抱えている企業もありますが、日本企業のすべてが後れを取っているというには一般化しすぎでしょう。日本にも、マーケティングを上手に行っているイノベーティブな企業はあります。
その一つがトヨタです。プリウスは最も成功し、最もイノベーティブな製品の一つです。アメリカではレクサスも確固たる地位を築き上げました。彼らは開発、製造、そしてマーケティングにおいて多大なイノベーションを起こしています。
もう一つはユニクロ。ユニクロ事業を展開するファーストリテイリングは、2012年に社内公用語を英語に切り替えました。このことは、彼らがグローバルカンパニーとして成功できた大きな要因の一つだと思います。また、教育制度も充実していました。従業員はユニクロの理念を十分に学ぶことができるのです。そしてもちろん、ヒートテックをはじめとしたそれぞれの製品も優れています。世界で最もイノベーティブな衣料品小売企業の一つです。
これらの企業は世界中で良いブランドイメージを構築することができており、ほかの企業のお手本になるような成功例です。
一方で、ブランド・マネジメントに課題を持つ企業の多くは、 “サイロ化”の問題を抱えています。