【ベルリン】ベルリンの壁が崩壊し、欧州の冷戦が終結してから30年たった今、東欧と西欧の間で新たな政治的分断が表面化している。
東西ドイツ統合の成功と東欧全域での民主主義の勝利にもかかわらず、東欧と西欧は再び離れつつある。その背景には、西側諸国の同盟と欧州連合(EU)の結束を脅かしている価値観の対立がある。
大半の西欧諸国の主流派政党は反体制的な政治家から攻勢を受けることが多くなってはいるものの、リベラルな価値観、法の支配、基本的人権、そして長年の試練を経てきた制度を巡る戦後の共通認識を総じて維持してきた。
大半の東欧諸国は対照的な状況にある。そこでは排他主義の政党が権力を握っているか勢力を拡大している。こうした政党はより独裁的な支配を好む一方、移民や民族・宗教の多様性、同性愛者の権利、男女同権論を弱さとモラル退廃の兆候として拒絶する。
ポーランドやチェコ、ハンガリーなど、かつてソビエト連邦の圧政と戦った一部の東欧諸国は現在、西欧のリベラルな価値観の一部を強く拒絶する政府によって統治されている。
旧東ドイツの元民主活動家の中にさえ、今では極左や、移民排斥を主張する「ドイツのための選択肢(AfD)」を含む極右の運動に参加し、既存勢力に対抗する活動を展開している人がいる。AfDは今や同国最大級の政党になっている。
ドイツの著述家・学者で元議員のフェラ・レングスフェルト氏は、共産主義下の旧東ドイツで全体主義の政府と戦ったことで、平和時のドイツの最高勲章であるドイツ連邦共和国功労勲章を授与された。同氏は詩人の夫によって秘密警察に密告され、投獄されていた。
しかしベルリンの壁崩壊を目撃してから30年後の今、レングスフェルト氏は新たな戦いのために筆をふるっている。自身がかつて支持していたアンゲラ・メルケル首相が率いるリベラルな政府との戦いだ。