家族にできる一番のことは
患者さんの辛さを理解すること
廣橋:そして、家族にできる一番のことは、患者さんの辛さを理解するということです。
理解できれば、もう半分成功です。ほとんどは理解できない、わからないんですよ。
後閑:患者さんが「痛い!」と言っても、医療者でも「ほんとに痛いのかな?」と言う人もいますね。
「でも本人にとっては痛いんだよ!」と思いますけれどね。
廣橋:そうなんです。痛いと言えているだけまだマシかもしれません。
患者さんが自分の辛さをどれくらい訴えられているかという研究がありますが、一番辛さを訴えることができないのが医者なんです。自分の辛さを医者には一番言いにくいんです。
看護師さんにはよく痛いんですと伝えていても、医者が回診に行って「大丈夫ですか?」と聞くと、「大丈夫です」と言う。これが患者さんなんです。
後閑:確かにそうですね。
廣橋:医者は一番だめなんです。けれど、大半の医者はそのことに気づけていない。
ちなみに二番目に言えないのが、看護師です。専門職は難しくて、専門職で一番訴えることができるのは助手だったりするんですよね。
患者さんは自分の辛さを訴えられないという大前提をまず理解して、その辛さや何につらいのか、患者さんが発信しているならそれを受け止めることです。
たとえ発信していなくても、気づける、察することができるということが一番、苦しんでいる人を助けるためにできることなのだろうと思います。それは医療者ではなく、周りの家族やご友人ができることだと思います。
後閑:周りが「本人がこういうふうに言っていました」と医師に伝えるということですね。それも大事な役割ですよね。
がんを抱える人を支える家族に向けてメッセージをお願いします。
廣橋:治らない病気になってしまったことは、とても辛くて悲しいことですし、何よりご本人が一番ショックを受けていることでしょう。
けれど、治療は難しいとは言っても、まだまだ考え方や準備次第で充実した人生を過ごすことはできます。
ご家族は、ご本人がこれからどうしていきたいかということを一緒に考えて、ご本人にとっての一番の味方になっていただきたいと思います。そして、ご家族も辛さを自分で抱え込まずに、いろいろと力になってくれる人を見つけてほしいです。
がんは非常にシビアな病気というイメージかもしれませんが、痛みを取る適切な治療をしていれば、亡くなるギリギリまで元気で過ごせるのが、がんの特徴です。
ちゃんとした緩和ケアを早期から受けることで、ギリギリまで元気で過ごせます。それががんです。
辛さをみんなで分かち合い、周りが理解してくれれば、本人の辛さはやわらぎます。
●どんなシビアな状況であっても家族にできることはある
●本人の辛さを理解しようとすること
●早期からの緩和ケアで、ギリギリまで元気で過ごせる