台風の上陸情報をめぐり、気象庁に“挑戦状”をたたきつけ、物議をかもしたウェザーニューズ(千葉市)。気象ビジネス界のパイオニアだ。同社はなぜ成功したのか。その戦略を検証し、業界の現状と問題点を考察する。(「週刊ダイヤモンド」編集部 小島健志)
10月下旬、気象庁は、講堂に集まった民間気象会社などを前に「今後、気象庁と異なる台風情報は出さないように」と釘を刺した。会の名目は台風の講習だった。だが、異なる台風上陸情報を出したウェザーニューズへの“当てつけ”にほかならなかった。
事の顛末はこうだ。
ウェザー社は10月8日午前5時前、台風18号が「三重県志摩市に上陸」と有料会員へメールを配信、同時にインターネット上に掲載した。ところが、それより遅れて気象庁が「愛知県知多半島付近に上陸」と異なる発表を行なったのだ。気象庁はすぐに「台風情報は解説までにとどめるように」とウェザー社を口頭注意の処分にした。だが、ウェザー社は「気象庁の許可が必要な予報業務には当たらない。観測したことを伝えた」と主張した。
それだけではない。
ウェザー社の台風進路は、志摩半島上を通り抜けており、半島前で急カーブする気象庁の進路とは乖離している。ウェザー社は気象庁の進路を「奇跡のカーブ」と皮肉り、自社の正当性を訴えた。現地会員から寄せられた「急に風がやんだ」などの情報が判断の決め手となった。
あくまでも、気象庁は「複数の情報が出ると防災上、混乱を招く。台風情報の一元化が必要」との姿勢で、進路の正誤は検証中だ。過去には、気象庁が“降りた”ケースもある。2007年の台風9号では、今回と同様、上陸進路が両者で異なったが、気象庁が訂正を出した。今回も、複数の気象予報士の見方では、ウェザー社に分があるようだ。講習会後、ウェザー社は「災害に直面している人を第一に考え、可能な限り早く情報を配信したい」とあらためて訴えている。ちなみに、三重県や志摩市では「特に混乱はなかった」(担当部署)とのことだ。
ウェザー社はどのように予報を行なっているのか。