既存のJクラブではなく、小さなクラブならば斬新な挑戦ができるのでは、と考えていた。しかし、初めて訪れた今治の街並みが、サッカーのことだけを考えていた岡田に衝撃を与えた。

「実際に今治に行ったら、土地はあっても商店街に誰もいないというか。このままならチームが強くなっても、応援してくれる人がいないというか。少子高齢化の限界都市のようになっていたので、そこを何とか街と一緒に元気になる方法がないだろうか、と思って地域や地方の創生もやろう、と」

 今治の地で壮大なる夢を具現化させると決意した時に、プライベートで親交のあるライフネット生命保険株式会社の創業者、出口治明氏からかけられた言葉に深い感銘を受け、心のなかで目標を定めた。

「出口さんには『統計上、スタートアップした9割が5年以内に潰れる。岡田さんは1割の中に残るためのチャレンジを始めた』と言われたんですよね。同時に『リスクあるチャレンジを誰もしなくなったら、社会は変わらない』とも言われて、僕は5年をひとつの目標にすえてやってきました」

 四国リーグを制した2015シーズンから数えて、今シーズンは5年目となる。コーチングスタッフを含めて16人でスタートさせた「株式会社今治.夢スポーツ」は、浙江緑城サッカークラブ(中国)などとの提携事業を行うグローバル事業部などが新設された今では、60人近い社員が集っている。

「プロの監督は背中にのしかかってくる、鉛の塊のような重たいプレッシャーに『この野郎!』と思って耐えていればいいし、嫌になったら『もうやめた』と投げ出せばいい。しかし、経営者は違う。僕のもとへ集まってくれた60人近い社員へ給料を払い続けるために、毎月5000万円以上のキャッシュフローが必要になる。じわじわと真綿で首を絞められるような、社員や社員の家族を食わせていかなきゃいけない、というプレッシャーは監督の時とはまったく違う。やめる、なんて絶対に言えない」

J2昇格にはスタジアム建設が必須
30億円規模の収入を目指す

 指導者と経営者とで最も異なる点を、岡田は自身のリアルな経験を交え、聞いている側のちょっとした笑いを誘いながら説明する。後者の道を歩み始めて久しい今、鋭い視線は数年先までを見すえている。例えば夢スタの愛称で親しまれるホームスタジアムの収容人員は5000人で、J2のクラブライセンス申請に必要な1万人に遠く届かない。つまり、現状のままでは、どんなに好成績を収めてもJ2には昇格できない。