町田ゼルビア大友健寿社長10月17日の最終節、東京ヴェルディとの試合後にマイクの前に立つ大友健寿社長 写真:長田洋平/アフロスポーツ

日本中で54人しかいないJクラブの社長。責任企業の出身者が大半を占めている中で、異彩を放つ一人がJ2の優勝争いだけでなく、J1の残留争いでも注目を集めたFC町田ゼルビアの大友健寿取締役社長だ。54人の社長の中で6番目に若い41歳は黎明期のゼルビアだけでなく、チームの起源となった小学生年代のFC町田でもプレーした稀有な経験を持つ。目標として掲げる2020年のJ1昇格へ向けて舵を取る、異色の青年社長が歩んできた人生を振り返った。(ノンフィクションライター 藤江直人)

クラブ最高位の4位に食い込む
J1昇格・残留の行方を左右する存在に

 シーズン終盤を熱く彩る風物詩、J1の最後の1枠を争うプレーオフが今年も幕を開けた。今シーズンからはJ1の16位も参戦。名称を「J1昇格」から「J1参入」へ変えて、25日の1回戦ではJ2・6位の東京ヴェルディが退場者を出しながらも、J2・5位の大宮アルディージャを1-0で撃破した。

 90分間を終えて同点の場合は、順位が上のチームが次のステージへ進む。独自のレギュレーションが勝負をさらに盛り上げる中で、素朴な疑問も残る。本来ならばJ2の3位から6位までの4チームが登場し、2つのカードが組まれるはずの1回戦は、NACK5スタジアム大宮で行われた1つだけだった。

 答えはFC町田ゼルビアの存在にある。クラブ最高位の4位に食い込んだゼルビアは来シーズンのJ1の舞台で戦う資格、J1クラブライセンスをJリーグから付与されなかった。ゆえにJ1参入プレーオフに参戦できず、今シーズンは1回戦の勝者がJ2・3位の横浜FCとの2回戦に臨む変則開催となった。

 しかもゼルビアは、J2の頂点へも手をかけていた。ホームの町田市立陸上競技場にヴェルディを迎えた今月17日の最終節。後半37分に追いついたゼルビアは、5分間を数えたアディショナルタイムを含めて波状攻撃を仕掛ける。しかし、あと一歩が届かず、1-1のドローに終わった。

 勝っていれば逆転優勝を決め、ヴェルディがプレーオフ圏外の7位へ沈んだ。大分トリニータもJ1へ自動昇格する2位から、プレーオフへ回る3位になっていた。J2だけではない。J1でも自動降格は最下位の1チームだけとなり、17位がプレーオフへ、16位が残留とそれぞれ運命が繰り上がっていた。