読売、日経、Yahoo!の三社を中心とした
ジャーナリズムの異種格闘技
ここ最近の10年間で新聞の部数は約1000万部減り、売上は5645億円減少したという。これは新聞社一社が、まるまるなくなるほどのスケール感を持つ数字だ。
これほどまでに、急速に市場がシュリンクすることのインパクトは大きい。多くの場合、このようなケースにおいていは、古参同士が潰しあいをしながら新規参入組も迎え撃つという挟み撃ちの状況が強いられるのだ。プレーヤー全員が総負けするかもしれないという状況のなかで、それぞれの企業に勤める中の人にとっても、想像を絶するようなこともあっただろう。
本書『2050年のメディア』はこの四半世紀くらいの間、ネットの力によってどのようにメディアが変貌を遂げたのかという歴史を綴ったものである。なかでも中心的に描かれているのが、読売、日経、Yahoo!の三社。これらの企業で繰り広げられる綱引きは、まさにジャーナリズムの異種格闘技だ。
むろん背景には、WEB化に伴うメディア構造の変化がある。しかし、変化の鍵を握るキープレイヤーとして、花形と言われる記者職や編集職ではなく、販売や流通といったバックヤード機能に着目したことが、本書のユニークな点と言えるだろう。ジャーナリズムの変貌を本当の意味で知るためには、言論だけを見ていてはダメなのだ。