これらの疑問の一部に答える記事が「日本経済新聞」(11月18日)に載っていた話題だ。例えば、「覗かれる株注文データ 高速取引、個人に先回り」(川崎健編集委員執筆)だ。

 詳しくはぜひ記事を読んでみていただきたいが、信用取引の金利や、貸株の品貸し料といった証券取引に少々詳しい方ならご存じの収益源の他に、高頻度取引(HFT)業者が投資家の注文に先回りして収益を上げ、ネット証券がHFT業者から報酬をもらうような「注文の収益化」の仕組みがあることが説明されている。

 二昔前くらいの証券会社では通称「フロント・ランニング」と呼ばれる行為が存在することがあった。大口の顧客から営業部門が受けた株式の売買注文の情報を、自己勘定の株式トレーディング部門が何らかの形で得て、顧客の注文に先回りする形で自社が収益を上げる行為で、監督官庁の検査などで発覚すると処分の対象になる不正行為だ。もちろん、現在も禁止されている。

 ネット証券から私設取引所に注文が出て、この注文を見たHFT業者が投資家に先回りして東京証券取引所等に注文を出して、HFT業者が収益を上げることが可能になる。この一連の流れは、証券会社1社でやると不正になるフロントランニングが、証券会社・HFT業者が協力し、舞台装置として私設取引所等を使うと不正にならない(らしい)仕組みであることが分かる。マイクロセコンド(100万分の1秒)の時間単位で、言わば「分業フロントランニング」が行われているということだ。

 記事にあるように、投資家は、東証にあったはずの売買注文指し値を見て売り買いを行ったはずなのに、何者かに先回りされたように感じる。しかし、私設取引所で注文の一部は有利に(買い注文なら安く)約定されている部分もあるので、「私設取引所と東証のより有利な方で約定する注文システムだ」との建前に渋々納得する場合もあるだろう。

 すっきりしない印象を持つ投資家が多かろうが、こうした状況をどう考えて、どう付き合ったらいいのだろうか。