宮本武蔵「無念無相の打ち」の極意

OODAループの生みの親であるジョン・ボイドが傾倒した宮本武蔵は、『五輪書』で「無念無相の打ち」という言葉を用いて、無意識であることがいかに大切かを説いています。敵も自分も同時に打ち出そうとするとき、何も考えずとも心身ともに攻める姿勢となって手が自然に出る。これが無念無相の打ちで、アスリートが言う「ゾーンに入る」感覚に近いでしょう。

このように無意識のうちに手が出たり、正しい判断や行動ができたりするのは、直観のおかげです。格闘ゲームをする人ならばわかると思いますが、熟練者になるとわずか1フレーム(60分の1秒)の間に、相手の動きに合わせて攻撃や防御、回避のいずれかを選択してキャラクターを動かします。いちいち意識していては、とてもそんな俊敏な動きはできません。

何度もプレーして情報や経験をインプットすることで、「こういうときには、こう動く」というパターンが蓄積されます。そして、現状と頭の中にあるパターンを無意識のうちにマッチングさせるので、反射的なアクションを引き出すことが可能になるのです。

もちろん、手持ちのパターンの中に現状と合致するものがなければ、そうはいきません。失敗もするでしょう。ですから、パターンの引き出しをできるだけ多く持つことが必要で、それが多いほど直観は確かなものになります。