「1割」の業務改善から生まれた
意外な好循環とは

 そもそも、今のオフィスワークの大半は、パソコンとインターネットさえあれば、オフィスにいなくてもできる。結局は「これまでのやり方でなければダメだ」と思い込んでいるだけではないのか。

 味の素の、少なくとも営業部門では、そんな発想による時短に成功した。だが、工場のような生産現場ではどうだろう。

 西井氏の「残業ゼロ改革」は「全社一律、例外なし」が原則。工場も例外ではなかった。

 しかし、味の素では、工場の製造ラインを24時間稼働させるために、社員が3交代制でラインに張りついている。労働時間を短縮せよと言われても、そう簡単にできるものではない。ましてや在宅勤務など、とうてい不可能に思える。

 案の定、当初は現場から「(時短など)できっこない」といった不満の声が上がったそうだ。

 だが、川崎事業所長兼川崎工場長の辻田浩志氏は「生産現場でも在宅勤務は可能」と主張。「できないと決めつけてしまうとそこで思考が停止し、本当に何も変わらない。ひょっとしてできるんじゃないか?どうすればできるんだろう?まずは考えてみないと道は絶対に開けない」と言い、前向きに検討を進めた。

 まず工場の業務を分析すると、9割は現場にいないとできないとわかった。しかしこれは見方を変えれば、1割は現場にいなくてもできるということだ。

 そこで、その「1割」にあたる報告書作成や生産計画立案といった事務仕事を、交代で在宅や「どこでもオフィス」でこなせるよう、業務分担の見直しを行った。

 すると、意外な好循環が生まれたそうだ。

 事務仕事を自宅やサテライトオフィスで集中して行うと、早く終わるようになる。そこで時間が空いた社員が、工場に出勤している同僚がしなくてはならない事務仕事を肩代わりするようになったのだ。そうすると、今度はその同僚の手が空き、また他の社員の仕事を手伝える。

 こうして数珠つなぎで現場の仕事を皆が協力してこなすようになり、全体の労働時間短縮が実現したのである。