日英の衝撃的な教育格差が「ノンフィクション本大賞」受賞作を生んだ「2019年ノンフィクション本大賞」を受賞したブレイディみかこさん(左)と、『嫌われる勇気」の著者、岸見一郎さん Photo by Saori Taguchi

Yahoo!ニュースと本屋大賞が選ぶ「2019年ノンフィクション本大賞」を受賞した『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』の著者、ブレイディみかこさんと、累計発行部数が200万部を突破したアドラー心理学の解説書『嫌われる勇気』の著者、岸見一郎さん。そんな人気書籍の著者2人による特別対談を前後編にわたってお届けする。ライターであり保育士でもあるブレイディさんと、アドラー心理学の第一人者であり哲学者である岸見さんという異色の組み合わせならではの議論が飛び交った。後編では、ブレイディさんが今回筆を執るきっかけとなった日本と英国の「教育」の違いが対談の中心テーマとなった。(聞き手・構成/ダイヤモンド編集部副編集長 鈴木崇久、撮影/田口沙織)

>>対談前編【子どもを「手放しで信頼している」と言える?理想の親子関係と子育て】から読む

衝撃を受けた日本と英国の教育格差
シティズンシップ・エデュケーションとは?

ブレイディみかこ(以下、ブレイディ) 私が『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』を書いた理由の一つに、日本とイギリスの教育の違いがあります。特に息子が中学生になって「シティズンシップ・エデュケーション(市民教育)」が始まったことで受けた衝撃が大きいです。

 もう本当に扱う問題がすごいんですよ。最近もスピーチのテストが学校であって、ちゃんとスピーチ原稿を子どもたちに書かせるんですね。子どもによって取り上げるテーマは異なっていて、テロリズムの問題だとか、女の子だったら摂食障害になる子が多いので「ボディイメージ」を取り上げていたり。あとはLGBTQ(*)の問題とか、ポリティカル・コレクトネス(政治的な正しさ)とか……。13歳と14歳のクラスですよ?(笑)

*編集部注:レズビアン(女性を恋愛対象とする女性)、ゲイ(男性を恋愛対象とする男性)、バイセクシャル(男女どちらも恋愛対象とする人)、トランスジェンダー(生まれた性と異なる性で生きる人)、クエスチョニング(自分の性認識が分からない、定まらない人)の頭文字を取った、性的少数者を表す言葉
日英の衝撃的な教育格差が「ノンフィクション本大賞」受賞作を生んだ「2019年ノンフィクション本大賞」を受賞した『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(新潮社)

 しかも、スピーチ文の書き方をバッチリ習った上でその型に沿って原稿を書いて、スピーチするところまでをテストで採点されるんです。これはすごいと思いました。たぶん日本の中学校ではここまでしていないだろうなって。

岸見一郎(以下、岸見) していないでしょうね。私の息子は、高校のときに卒業論文を書く必要があって、本当に手間暇かけてコツコツ書いていました。「この論文を書くことと受験勉強は必ずしも両立しないね」と私が言ったら、「そこが問題なんだ」と返してきました(笑)。

 結局、息子は「コソボ空爆は人々を救ったか」という論文を書いて卒業しました。そういう流れで息子は政治学を志望して、今は移民の研究をしています。ブレイディさんの息子さんのように学校で習ったわけではないですが、シティズンシップ・エデュケーションに相当するようなことを自分で身に付けたのだろうと思います。

ブレイディ 将来につながる自発的なシティズンシップ・エデュケーションだったんですね。