このところ、日米共に株価の動きは堅調である。実際の経済指標や個別企業の業績を見る限りにおいては、必ずしも良いわけではないのだが、大きな下落もなく順調に推移している。そんな中、「そうは言ってもそろそろ下げるのではないか?」とか「実体経済から考えると今のマーケットは行き過ぎているように思う」という声も出てきてはいるが、相変わらず市場は強い。
相場のことわざに「もうはまだなり、まだはもうなり」というのがあるが、面白いことに、市場というのは、警戒感が出ているうちは下がることはなく、誰もが強気一辺倒になった時にこそ、暴落するというやっかいな性質を持っているのだ。したがって、まだ当面は強い相場が続くかもしれない。
おそらくこの数年、退職者の人たちで投資を始めた人も多いだろう。退職者や高齢者が株式投資することについては賛否両論があるだろうが、筆者は別に悪いことではないと思っている。ただし、その目的とやり方は間違えないようにしなければならない。具体的にどういうことに気をつけて始めるべきか、考えてみたい。
(1) 退職金で投資デビューはNG
実際に定年になった人の中には、初めて株式投資を経験するという人が少なからずいるようだ。それも少額から始めるのであればともかく、退職金は余裕資金だからとばかりに、かなりまとまった金額で投資をする人もいる。
しかしながら、間違えないようにしないといけないのは、退職金は多くの人にとって決して余裕資金なのではなく、老後の大切な生活資金の一部である。だから、リスクの大きいものにまとまった金額を投入するのは感心しない。
さらにやっかいなことがある。それは株式投資を非常に甘く考えていることだ。以前にもこのコラムで書いたことがあるが、「株のもうけなんか、あんなものは不労所得だ」とか「額に汗して稼がない株式投資はやるべきではない」という人は多くいる。筆者は決してそうは思わないのだが、これは考え方の違いだから、そう思う人はそれでいい。ただ、そういう人がずっと株式投資に手を染めないというのであればいいのだが、退職金をもらって急にもうけたいという欲が出てくることもある。そんな場合、投資の経験もなく、「投資なんて楽をしてもうける簡単なものだ」と高をくくって安易に投資することだけは、やめたほうがいい。
投資はそれほど安易なものではないし、誰にでもできるとも限らない。もちろん、ひと口に投資と言ってもさまざまなやり方があるのだが、初心者には守るべきルールがある。それは、退職金というまとまったお金を、リスク商品にいきなり投入するのは絶対にやってはいけないということだ。もし投資未経験者が定年退職後に投資を始めるのであれば、まとまった金額で一度に投資するのではなく、少額から始めて、経験を重ねていくべきであろう。