私は再度「そうですか、前に電話に出た者の案内は間違っていますね。当社では無料でそのサービスは受けられません」ときっぱり言い切った。

 するとお客様もこいつはいくら言っても無駄だと判断したのかあっさりと電話を切った。こういうクレーマーは必ず要求を押し通そうとしてくるわけではない。多くが通ったらラッキーだな程度の罪悪感でオペレータに無茶を言ってくるのだ。でもその分罪悪感が軽いのでたちが悪い。

 もうコールセンターに来られなくなってしまった彼女へ、今更だけど言ってあげたかった言葉がある。まず、会社の非を責められてもあなたは悪くないのだから申し訳ないと思う必要はないということ。

 それから、そんな電話は自分で何とかしようと思わずさっさと先輩や男性社員に代わってしまってもいいと言うこと。女性の身としては悔しいけれど、そういうお客様は男性が電話に出た瞬間に態度を180度変えて、全然怒鳴らなくなることが多いのだ。

 そして、一度言質を取られてしまったとしても、必ずそれを飲まなければいけないわけではないということ。年若い人たちは真面目で素直な人が多いので、一度「YES」と言ってしまったらそれを守らなければいけないと思う人が多いのだけれど、ついうっかり相手の要求を認めてしまっても、

「さきほどは××と申し上げましたが、それは出来かねます!」

 撤回してもいいのである。一度言質を取られたからといってそれに従う必要はないと言うことを覚えておいてほしい。

 もうコールセンターで働く気にはなれないかもしれないけれど、私はもっと早くこのことを彼女に伝えてあげたかった。それからもしこのコラムを読んでいるあなたが、無理な言質を取ってこようとする相手に出会ってしまった時にはぜひこのことを思い出してほしいのだ。

​※AERA dot.より転載