『役所窓口で1日200件を解決! 指導企業1000社のすごいコンサルタントが教えている クレーム対応 最強の話しかた』の著者でクレーム対応のプロ、山下由美さんがこれまでにない画期的なクレーム対応の話しかたを初公開。「怒鳴る」「キレる」「自分が正しいと言い張る」「理詰めで責める」「言い分が見当違い」「多人数で取り囲む」「シニアクレーマー」などあらゆるお客さまからのクレームを、たったひと言「そうなんです」と言わせるだけで解決します。

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お客さまとしての関係を保つ工夫を

 近年、現場を悩ませているのがシニア世代のクレームのお客さまです。コールセンターだけではなく、公共機関や病院、店舗などで、業務に支障が出るほど対応に苦慮しているところも少なくありません。

 シニアによるクレームは、団塊の世代が引退した頃から目立つようになった現象で、クレーム対応のスペシャリストの間では「団塊クレーム」と呼ばれています。

「長時間にわたってクレームをつけるシニアに、どう対処すればいいでしょうか?」

 こうした質問をよくいただきます。じつに難しい問題です。まずは、クレームを申し立てるシニアの心情を考えてみましょう。

ケース:気がつけばクレームが生きがいに……

 Kさんが大手企業を退職したのは2年前、65歳の時のこと。厳しい競争を勝ち抜き、部長職まで登り詰めたKさんですが、退職してしまえば、一人のシニアです。今まで「ハイハイ」と話を聞いてくれた部下はいなくなり、楽しむ趣味もなく、家族との会話もない。何もすることなく、家で過ごす日々を送っていました。

 退職して1年くらいは同期退社の友達たちと、時折、飲みに出掛けたりしたものの、各家庭の事情や健康問題で今では疎遠に……。家庭に居場所はなく、友達もなく、すべきこともない……。そんな孤独な毎日がこれから何年続くのが、ぼんやりとした不安が徐々に募り始めます。

 そんなある日のこと。ある企業の商品チラシに誤植を見つけて、企業のサービスセンターに電話を入れました。大ごとになっては大変だろうという親切心からでした。クレーマーと思われないか、心配しながらかけた電話でしたが、応対したオペレーターの対応は丁重で、電話を切るときには「ご指摘ありがとうございます」とお礼まで言われました。

「自分だってまだ役に立つんだ!」と、久しぶりに誰かの役に立った充実感で胸がいっぱいでした。

 このことがきっかけでKさんは、何か気づいたことがあると、企業や役所に電話を入れるように。初めは善意に基づくものでしたが、やがて電話をかけるためにミスを探したり、ちょっとしたことですぐにクレームをつけるようになっていきました。

 特にターゲットとしたのが、相手から電話の切られることのまずない、コールセンターや官公庁、自治体などです。いつも「はい」「はい」と、30分でも1時間でも話を聞いてくれて、最後には「ありがとうございます」と、感謝までされるのだからやめられません。

 ある時、いつものようにコールセンターに電話を入れると、不慣れなオペレーターなのか、感謝の気持ちが伝わってきません。それどころか、「でも、ですね……」と怒り口調で非難してきます。

「こっちは客だぞ!」

 思わず、声を荒げたところ、急にオペレーターの声色が変わり、「申し訳ございませんでした」と謝り始めました。

 Kさんの身体に電流が走ります。「自分にはまだ威厳がある。怒鳴れば、相手は引くんだ」――。“シニアクレーマー”誕生の瞬間です。

 昨今、何かと叩かれることの多い団塊の世代ですが、仕事に人生を捧げ、今の豊かな日本の礎を築いたのはまぎれもない事実です。とはいえ、退職後の寂しさやストレスを、クレーム担当者が受け止めなければならないわけではありません。

 ただ、シニアのクレームからも有益な情報がいろいろもたらされます。今後ますますシニアの数が増えていくことを考えれば、そうした情報をどう生かしていくかが、ビジネスの成否を左右すると言ってもいいでしょう。

 では、玉石混交のシニアからのクレームに、どう対処すればいいのでしょうか。ポイントは2つです。