オーダーメイド医療の
時代はいつ到来するのか

「がん患者」という「1つの集団」ではない。同じ肺がん患者でも、一人ひとりの遺伝子が違うし、免疫機能も異なる。ゆえに、遺伝子を解析して一人ひとりの最適ながん治療法をすべきだ。これこそ、中村氏が二十数年前に唱えた「オーダーメイド医療」という考え方である。

 そんな中村氏がこれから何を目指しているのかということは、詳しくはぜひ「がん消滅」を読んでいただきたい。

 先日、東芝が、血液1滴から13種類のがんを発見できる検査キットを開発して、2021~22年に人間ドックの血液検査などで実用化することを目指すというニュースがあった。数年前なら「そんなインチキ検査は許せん!」と怒りのクレームが寄せられたはずだが、「がんゲノム医療」という言葉も認知されだしている今、「早く実用化してもらいたい」と好意的に受け取られている。

 もちろん、「エビデンス原理主義」の攻勢もいまだに強い。欧米が続々とがんゲノム医療や免疫療法に舵を切る中で、日本では「海外ではいろんな研究があるが、実用うんぬんは大規模調査などのデータが揃ってからでしょ」なんて感じで、「とにもかくにも抗がん剤」という、遺伝子検査や、本人の希望を無視して問答無用の「標準治療」のゴリ押しが行われている。

「まずは標準治療で様子を見ましょう」なんて抗がん剤漬けにして免疫力を落とすだけ落とした後に、「効かないので免疫療法に切り替えますか」と、嫌がらせのような治療をする医師もいる。免疫療法は、抗がん剤のように薬でがんを殺すのではなく、患者自身の免疫力でがんを殺す。「エビデンスがない」の一言で異端扱いされてきた弊害で、免疫療法に対する基本的知識が怪しいような医師も存在するのだ。

 中村氏の「日本の医療を変える戦い」はまだ始まったばかりだ。