簡単に入手できる薬だが
ボーっと飲んでいてはいけない

 便秘をこじらせる自己流治療の最たるものは「市販便秘薬」の飲み過ぎだ。

「日本ではつい最近まで、酸化マグネシウム(商品名:マグミットほか)とセンナに代表される刺激性便秘薬の2種類しか、便秘治療薬はありませんでした。酸化マグネシウムは江戸時代の1823年に、シーボルトがオランダから持ち込んだ薬です。一方、刺激性便秘薬であるセンナは、アフリカ東北部のナイル川中流域に産するアレキサンドリア・センナという縮物が主成分で、ヨーロッパでは紀元前から下剤として使われてきました。

 すごいでしょ。200年近くもの間、進歩がなかったのです。『便秘は病気じゃない』と軽んじられてきた証拠です。諸外国では、欧米ばかりでなく、タイでもシンガポールでもマレーシアでも、優れた便秘薬が普通に処方されているんですけどね。

 それに酸化マグネシウムもセンナも、薬局やネットで、処方箋なしで購入できるため、私のところに来る患者さんでは、通常1回3錠・1日3回までとか、毎日飲み続けてはいけないと注意喚起されているにもかかわらず1日100錠飲んじゃうとか、毎日ずーっと飲み続けてきたという方がざらにいます。

 医者でも、そのあたりについて、あまり気を付けていない人もいるようです」

 するとどんな恐ろしいことが起きるのか。

「酸化マグネシウムは、センナに比べると効き目が穏やかでお腹が痛くなることもめったにない、非常にいい薬です。今でも、病院で処方される便秘治療薬の9割以上は酸化マグネシウムなのですが、残念ながら日本の便秘事情は変化しています。

 というのも高齢者が増えていますよね。高齢の方々は、元気な方でも、20~30代のころと比べて腎機能が低下しており、薬の解毒作用が半分から3分の1程度しかありません。

 酸化マグネシウムには高マグネシウム血症といって、血清中のマグネシウム濃度が急上昇することで、筋力低下や血圧低下、意識障害、意識消失、不整脈などを引き起こして、まれに死に至る副作用があるので注意が必要なんです」

 処方する医師側も注意が必要だし、患者側も簡単に入手できる薬だからといって、ボーっと飲んでいてはいけないのだ。