国交省も堤防強化の必要性を認めており、2015年には、氾濫が発生しても被害を軽くする「危機管理型ハード対策」を打ち出した。しかしその内容は、「アスファルト舗装などによる天端の保護」と「ブロックなどによるのり尻の補強」の二つで、肝心の「裏のりの補強」は含まれていない。

 なぜ国交省は今も、耐越水堤防を拒み続けるのか。

 長年にわたりダム問題を研究している嶋津暉之(しまづてるゆき)・水源開発問題全国連絡会共同代表は、スーパー堤防(高規格堤防)との関係を指摘する。

荒川のスーパー堤防
荒川のスーパー堤防(埼玉県川口市) Photo:PIXTA

 スーパー堤防は、堤防の裏のりの勾配をものすごく緩やかにし、裏のりの幅を堤防の高さの30倍に広げて、その上を住宅地や公園にする。国交省はこれを、越水に耐えるただ1つの工法だとして推進している。 耐越水堤防を認めると、スーパー堤防推進の根拠がなくなってしまうことを恐れているというのだ。

 石崎氏によれば、耐越水工法は1メートル当たり30万~50万円で施工できる。1メートル50万円としても1キロメートルで5億円、1000キロメートルで5000億円だ。

 江戸川の片側のわずか120メートルを整備するだけで40億円以上もかかるスーパー堤防(東京都江戸川区小岩1丁目地区の場合)に比べてケタ違いに安い。

 河川事業とダム建設事業を合わせた治水のための年間予算は、約6400億円(国直轄事業と補助事業の合計、2018年度当初予算)もある。ダム建設費を大幅に削って耐越水化に充てれば、数年程度で全国の堤防を強化できる。

 石崎氏は、完成から年月がたって沈下した堤防や、川幅が狭くなる場所、本流に支流が合流する地点など、特に危険な部分を急いで強化するだけでも大規模な水害はなくせるとし、地球温暖化が進行し、豪雨や台風が巨大化した今こそ、耐越水堤防を復活すべきだと主張している。

ダムの洪水予防効果は限定的
中下流地域では不明

 ところで、国交省が推進したダムは、水害被害を防止・低減しただろうか。

 ダム関係の訴訟をいくつも手掛けた西島和(にしじまいずみ)・弁護士は、「ダムの治水効果は不確実で限定的。しかもダムは時に凶器になる」と話す。