「迅速な謝罪と撤回」を
すべきでない3つのケース

 危機管理の仕事をしていると、初動が重要というのは常識として、実はそれと同じくらいカギとなってくるのが「マニュアル対応をしない」ことだと痛感する。リスクというものは10あれば、10種類の対応方針が必要となる。リツイート数がこれくらいの水準なので静観、数がはね上がってきたので謝罪、という機械的な対応をしていると、必ずデカいしっぺ返しを食らうのだ。

 そのような意味では、世間から少しでもたたかれると即座に中止・撤回をして幕引きを図る、というやり方が定番化しつつある今のムードは、かなり危うい。鎮火させようとしたら、かえって批判やバッシングを強めてしまったなんて悲劇が続発する恐れがあるからだ。

 事実、SNSなどでバッシングされた際に「迅速な撤回と謝罪」をしてはいけないケースもある。例えば、以下の3つだ。

(1)個人や組織の信条・理念に関わる場合
(2)批判覚悟の取り組みをしている場合
(3)「疑惑」の追及を受けている場合

(1)の「個人や組織の信条・理念に関わる場合」のわかりやすい例は、2017年のアパホテルの南京事件炎上騒動だ。

 アパホテルの客室には、元谷外志雄会長の南京事件否定本が置かれている。これを見た中国人観光客が「右翼ホテル」だと炎上。中国国家旅遊局が利用中止を呼びかけるような国際問題にも発展した。

 当時、中国人観光客への影響などから、このような政治的な本を客室に置くのはいかがものかという意見もあった。イデオロギー的に謝罪はできなくとも、この偏った本は撤去すべきではなんてことを言う専門家もいた。

 が、筆者は「アパホテル炎上騒動、謝罪すべきでない3つの理由」という記事で、撤去も謝罪もすべきではないと主張させていただいた。イデオロギー的な話ではなく、企業危機管理の観点からだ。