イライラオーラ全開で、ぐったりしているところを無視して、淡々と身支度を済ませて出勤しようとしている姿に腹が立ったのだ。

「ひどいよ。何か聞いてよ。どうしたのとか、大丈夫とか、大変そうだね、とか。私のこと、心配じゃないの。どうでもいいと思ってるんじゃないの」

 責めだすと止まらない。何年も前の出来事や、正明さんの母親やお姉さんのことまで持ち出して、ののしってしまう。内心、自分が理不尽な難癖をつけていることは分かっているが、ブレーキが利かないのだ。

 こうなってしまうのは、たぶん「月経前症候群(PMS)」のせい。

 PMSは生理の約2週間前から起こる心身のトラブルの総称で、日常生活に差し障るようなさまざまな症状が一群となって現れる。病院で診てもらったことはないが、志津さんは10代のころから、失敗を繰り返してきた。後になって振り返ると、どうしてあんなことで激怒してしまったのか分からないといったトラブルはすべて、この時期に起きていたのである。

 志津さんが月経前にイライラするのは正明さんも知っていたので、普段は軽く受け流し、帰りに志津さんの好きなお菓子などを買ってきてくれるのが常だった。

 だが一昨日は、出張から戻ったばかりでストレスがたまっていたのだろうか。「僕のことを責めるのは構わないけど、家族のことまで悪く言うのは我慢できないよ」と反撃。怒りまくって出勤し、夜中に帰宅した後も口をきかず、目も合わせてくれない。

 一方、志津さんは、反省していたし、朝、トイレで、遅れていた生理が始まったことを確認。「生理始まったわ。昨日のイライラも、生理の前だったからだと思うの。ごめんなさい」と謝ったのだが、正明さんの口からまさかの冒頭の発言が飛び出してしまった。

生理への理解をうながす動きが
男性の側から出てきている

 生理痛や生理前のつらい症状は、当事者以外には理解しがたいものだ。しかも男性が理解できないのはともかくとして、女性同士でさえ理解してもらえないことは少なくない。個人差が激しいという面では、更年期障害にも似ている。

 ただ最近は、生理への理解を深めようという動きが、男性の側からも出ており、心強い。

 例えば、Webマガジン『オモコロ』にて2017年1月17日から連載されている『ツキイチ!生理ちゃん』(小山健作)は、女性の生理をポップなキャラクターとして擬人化し、そのつらさや悩みを代弁させることで女性の共感を集め、2018年6月11日には加筆修正し書き下ろしを加えたものがKADOKAWAよりコミックスとして刊行された。ほか、月刊コミックビームにおいても2018年12月号から連載が開始されているし、第23回手塚治虫文化賞短編賞まで受賞しているのだから素晴らしい。2019年11月8日には、二階堂ふみ主演の実写映画が公開された。