重要なのは、このサイクルを回す「スピード」を、できる限り速くすること。格闘ゲームでいえば、どんどん対戦して、どんどん結果を検証することです。
理由は2つあります。
ひとつは、eスポーツの世界では正解が常に変化しているからです。
例えば「昨日の試合でAの戦い方で勝った。今日、同じ相手に同じ戦法を使ったら負けた」。こういうことが、当たり前に起こります。ずっと同じことをやっていたら勝てません。
プレイヤー人口が増えたこと、情報が共有されるようになったこと。大きくこの2つの理由で、攻略の速度は飛躍的に高まりました。常に新しい一手が研究され、それが披露されることが、また新たな一手を生むきっかけになるのです。日々状況が更新されているので、時間をかけていると更新された情報に対応していないやり方になってしまいます。
同じ「反復」でも、昔はコツコツ時間をかけて準備をし、本番に臨めばよかったけれど、今は、いわば「小さな本番」を繰り返して学び続けないと、努力が全部ムダになってしまうのです。
負けや失敗に「慣れる」
2つ目の理由は、試行回数を増やしてなるべく多く失敗するためです。「えっ、失敗はなるべくしない方がいいでしょ」……そう思った人が多いかもしれません。誰よりも勝ちにこだわっていた、過去の僕もそうでした。でも、正解がない、あるいは常に変化している状況においては「負け」や「失敗」は僕らの味方になってくれるものなのです。実際、「勝ち筋」よりも「負け筋」の方が、圧倒的に分析・検証がしやすい。失敗することで、自分がやろうとしていることが正しいのか、間違っているのかが明確にわかります。
「負けや失敗に慣れる」ことによるいい影響もあります。ここぞという本番に強くなれるのです。僕も大事な試合では緊張もするし、結果どうなるのかの不安を持つこともあります。それでもいざ試合が始まれば、それを忘れて思い切りやる。「返し技をもらったらどうしよう」「思い切った行動をされたらどうしよう」と考えれば積極的な手は打てませんし、勝負のタイミングも逃してしまいます。積極的に行動して失敗しても「当然のこと」として受け入れ、だったら次はこうだと二の矢三の矢を放っていく。力を出し切りたいのなら、どうなるかわからない結果からは距離を置く。だからこそ、プレッシャーがかかる場面でも踏ん張れるのです。