「心の介護」は、介護される人が孤独感や疑心暗鬼にならないための心のケアのことを指します。心の介護とは、寄り添うこと。心の介護ができるのは、家族です。

 そして「資産の介護」。預貯金の出入りや、だまされないためのケアです。先に紹介した家族信託などや任意後見などの制度もあり、家族に託すか、もしくは私たちのような専門家のアドバイスを受けることができます。

 このなかで、家族にしかできないものは、「心の介護」だけです。このことを知ったうえで、介護でモメないための事前対策を考えてみましょう。理想的なのは、介護がはじまる前、健康なうちにきょうだい間で話し合っておくことです。

 ただ、親が元気なうちは、なかなかそこまではできないのが現実でしょう。となれば次の段階は、「介護がはじまる段階」で話し合うことです。親に認知症の症状が見られた、転んで骨折をしたなど、いよいよ介護が必要となったら、すぐに話し合いましょう。

 実はこれこそが、あとあと相続でモメ事をつくらない最大のポイントといってもいいでしょう。ただ漫然と話し合うのではなく、具体的に話し合うことが大切です。例えば、「ヘルパーさんとの窓口になるのは誰か」「(介護にかかるお金を計算したうえで、親のお金でまかないきれない場合)誰が月いくら払うか」「親の財産管理は誰がやるか」など、細かく挙げればたくさんあります。

 お金の問題はなかなか話しづらいかもしれませんが、ここでこじれれば、相続時に金銭請求をする(される)ことになりかねません。相続の実務を担う私たちから見た場合、「嫁の特別寄与制度」を使うのは、あくまでも「最後の手段」です。介護をした長男夫婦がきょうだいに金銭的請求を訴えるのは、ほかに打つ手がないとき、ということです。ただし、介護はその都度、状況が変わるものです。介護度が上がったり、必要なケアが増えたり、入院したり、施設に入居することもあるでしょう。

「そんな話は聞いてない」「兄貴が勝手に施設に入れることを決めたんじゃないか」などということのないように、その時々できょうだいで情報を共有し、コミュニケーションをとることが大切です。