今年、日本で大ブレイクしたタピオカ。そのブームももう終わるのではないかと言われ始めた。それは本当だろうか。タピオカが国民食となっている台湾の出身で、日本で活動する経営者のJack Huang氏が、日本にタピオカが根付く可能性を行動経済学の視点から分析する。
タピオカは日常生活に定着するか
「ブームは終わり」との声も
2019年の年の瀬が迫る今、「タピオカ」と聞いてまず思い浮かべることは、「そろそろブームが終わるのでは?」ということではないだろうか。街中にタピオカ店が乱立する一方、店の前の行列が減っていく様を見ると、「終わりの始まり」を感じずにはいられない。
しかし、ブームは鎮静化したかというと、必ずしもそうとは言い切れない。SNSではまだまだタピオカが被写体になる確率は高い。また、地方都市のタピオカ店や、黒糖やフルーツを使った「バリエーションタピオカ店」の人気は、まだ伸びしろすら感じられる。
いったいこの熱気がいつまで続くのかと、考えずにはいられない。タピオカは一過性のブームで終わるのか、はたまたパンケーキのように日常的な消費の一部として定着して行くのか、FNB(Food and Beverage)業界人として、これほど気になる問いは他にない。
そこで「行動経済学」的なアプローチを用いることにより、筆者が研究する「ハンドドリンク業界」の成長要因と今後のトレンド分析を通じ、タピオカブームがいつまで続くのかを占ってみよう。
行動経済学の3つのキーワードは
「フラペチーノ」「ハーディング」「心の財布」
行動経済学から見たタピオカブームのきっかけは、スタバの「フラペチーノ」だと言えよう。2006年発売以降、売上がうなぎのぼりに上昇していったフラペチーノ。その結果、スタバは「1杯600円以上するドリンクを購入する習慣」を持つ消費者群を育て上げた。この習慣を持つ消費者たちが、フラペチーノからタピオカへと移ったことで、タピオカブームにつながった側面は小さくないのではないかと、筆者は分析している。
ご存じのようにタピオカドリンクも、多くの商品は500円を下らない価格設定であり、普段飲むことのない中高年の消費者は、割高に感じることも多いといわれる。ビジネスパーソンよりも可処分所得が少ないはずの若者たちが躊躇することなくタピオカドリンクを消費する背景には、「おいしい飲み物は多少値が張るのが当たり前」という価値観が、スタバを中心とする高価格帯のコーヒーショップが普及したことによって、もたらされたと考えることができる。