昨年初秋にできた取引先の近くにあるラーメン店。何度か訪れたが、とてもおいしい。和風のスープにちょっと太くて硬めの麺が合う。すぐに人気が出て、ランチ時には11時半の時点で行列ができるほどだった。
ところが先日久しぶりに行ってみたら、行列もなく、店は閑散としている。あらま、どうしたのだろうか。
中に入ってみてわかった。店内がやたら寒いのだ。数人いたお客の1人はコートを着たまま食べていた。それにもかかわらず店員さんは半袖のTシャツを着て走り回っている。おそらく厨房はとても暑いのだろう。きびきびと動き、一生懸命さが伝わってくるが、客商売には慣れていないのだろうか。お客が寒がっている状況を確認する余裕もなさそうだ。
勝手な臆測にすぎないが、「脱サラ」して始めたラーメン店なのかもしれない。厨房にいるコックが会社員をやめた夫、フロアを担当するのが妻と、もう1人の店員さんは妻と顔がよく似ているので、妻の姉か妹のように思われる。典型的な「士族の商法」とも見える。ともかく、あまりに一生懸命だから、寒いので温度を上げてほしいとも言いづらい。
いくらおいしいといっても、凍えるような思いをしてまでラーメンを食べたいとは思わない。そんなことでお客さんの足は遠のいてしまったのだろう。
凍えるラーメン店に客が取る態度
「温度を上げて」と言うか、もう行かないか
経営者が自らの失策を知るには2つのルートがある。
社会科学の名著であるA.O.ハーシュマンの『離脱・発言・忠誠』(ミネルヴァ書房、2005年)では以下のように説明されている。
「業績の低下は、典型的かつ一般的には、提供される製品やサービスの“質の面”での、絶対的もしくは相対的低下に反映されると考えるのである。ここで経営陣は次の2つの代替的ルートを通じて、自らの失策を悟る。