「ナッジには2つのタイプがあり、1つ目は情報を伴うナッジで、多くの人が同じ行動を取ったり同じ考え方を持ったりすると、彼らの行動や考え方は特定の情報となり、『あなたもこのような行動や考え方をするべきだ』と他者に呼びかけます。民主主義、環境保護主義などがこれに当たります。2つ目のナッジは同調圧力です。人は他者の目を気にして、周囲の行動に同調しようとするのです」(『実践 行動経済学』より)

 なお消費者は、自らの経験によって物事の良し悪しを判断することも往々にしてある。これを行動経済学では「セルフハーディング現象」と呼ぶ。ダン・アリエリー氏は名著『予想通りに不合理(原題:Predictably Irrational)』で、スタバを例にその現象の原理を説明している。

初めてスタバへ行ったときの
「病みつき」になる感情とは

横浜の中華街を席巻するタピオカ店 Photo:PIXTA

  著者は、初めてスターバックスに行ったときのことを思い出してみるよう、呼びかける。

「片付けなければならない仕事が残っているある日の午後、あなたはスターバックスの店の中に入りました。最初は高すぎると思いましたが、せっかく来たのだし高価なコーヒーの味が一体どんなものなのか試してみたいという好奇心に駆られ、あなたはショートサイズのコーヒーを1杯注文し、それをゆっくり味わってから店を出ました。

 その次にスターバックスの前を通ったとき、あなたは本来、コーヒーの品質と価格および他のリーズナブルな価格のカフェに行くまでのコストなどを理性的な脳でしっかりと考えるべきなのですが、あなたの脳は前回スターバックスに来たときの経験を思い出し、『前回スターバックスに入ったら、なかなか良かった。これは私にとって良い選択だ』という答えを出します。

 3回目、4回目、5回目にスターバックスの前を通ったときも、過去の記憶が繰り返し甦り、『習慣』の部分で述べた『きっかけ』となって、カフェに入って慣例的な行動をとり、最後に1杯のちょっと高価なコーヒーという『報酬』を手に入れるのです」