先進的でありながら
どこかのんびりした路線

 千代田線は技術的にも「次世代型地下鉄」の基礎を築いた。1971年から量産型の導入が始まった「6000系」車両は、軽量な「アルミニウム合金製車体」と、当時の最新半導体技術を取り入れた「サイリスタ・チョッパ制御」を採用。オイルショックに先駆けて、従来の電車よりも消費電力を4割近く削減した「省エネ電車」として登場した。

 さらに6000系車両は通勤電車の在り方にも一石を投じた。設計コンセプトは、あらゆる新技術を積極的に取り入れて全ての面で効率の良い車両であること、メンテナンスが容易であること、40年以上使用可能で20年後も陳腐化しないことに加えて、自動車との競争にも負けない快適性を目指すという野心的なものだった。輸送力一辺倒の時代から、効率性や快適性といった質的な向上へとかじを切る、大きな転機になったのである。

 しかし不思議なのは、その割に千代田線は東京の地下鉄の中では地味な路線だということだ。地味というのは閑散としているという意味ではない。事実、日本の地下鉄で3番目に多い、1日平均131万人(2018年度)が利用しており、混雑も東西線に次いで激しい(1998年まで東西線より混雑していた)。加えて、朝ラッシュ時間帯には慢性的な遅延が発生している。「そんなのんきな路線ではない」と利用者からお叱りを受けるかもしれない。

 それでも筆者にとっての千代田線は、静かにのんびりと裏通りを行くイメージだ。それは路線名やラインカラーからの連想なのか、上野や渋谷ではなく西日暮里と原宿でJR山手線と接続駅するためか、あるいは千駄木や根津、乃木坂を走り抜ける印象なのかもしれない。

 千代田線は、霞ケ関駅の工事で旧日本海軍の巨大防空壕を掘り当てたり、明治神宮前駅でナウマン象の化石を1頭丸々掘り出したりと、なぜか建設中の逸話が多い。その中でも一番の「事件」は1967年9月、根津~湯島間の工事中に不忍池に穴を開けてしまい、工事現場に水が流れ込んだという事故である。幸い人的被害はなかったが、干上がった池に取り残された魚たちを、職員があわてて救出したという。決して笑い事ではないのだが、いかにも千代田線らしいエピソードのように思える。

 今も千代田線は時代とともに変わり続けている。2008年に小田急ロマンスカーの乗り入れを開始し、地下鉄直通着席列車の先駆けとなった。2018年には小田急の複々線化工事完了に伴い、同線との直通運転を大幅に拡充。また、今年3月には北綾瀬駅のホーム10両化が完了し、1979年の全線開通から40年目にして初めて、北綾瀬~代々木上原間を直通する列車が走り始めた。車両も新型車両16000系への置き換えが終わり、今年度中に全駅にホームドアが設置される予定だ。

 進取の精神を持ちながら、どこかのんびりとしたところが千代田線の魅力である。筆者はそんな千代田線が気になって、目が離せないのである。