15兆円の洋上風力バブル_03Photo by Ryo Horiuchi

基礎を制する者が洋上風力を制する――。洋上風力発電設備の基礎を建設する場所は、プロジェクトの成否を決めるといっても過言ではない。その場所を定めるための海底地盤調査を担う海域調査船に乗り込んだ。特集「15兆円の洋上風力バブル」(全5回)の#03では、調査の現場から調査部隊の船内生活を本邦初公開の動画とともにお届けする。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)

基礎を制する者が洋上風力を制する
海域調査はプロジェクトの成否を握る

 “風任せ”といえる洋上風力発電プロジェクトで最も重要なのは、しっかり発電できるだけの風力があり、安定した風向の場所を見極めることだ。風況の良い場所であっても、洋上風力発電設備の基礎が建設できる海域でなければ設置はかなわない。

 海域はどれくらいの水深なのか。海底地盤の性質はどのようなものなのか。基礎を建設する場所を決めるための調査をどれだけ綿密に行えるかが、その後のプロジェクトの成否を決めるといっても過言ではない。

 洋上風力発電(着床式)は、海底に1本の杭を打つ「モノパイル式」という基礎構造が世界の主流になっている。海底に杭を4本打つ「ジャケット式」や海底に分厚い円盤のような土台を造る「重力式」に比べて最もコストが安いからだ。日本の多くのプロジェクトでも、コスト面からモノパイル式を採用することになるだろう。

 しかし、ここに落とし穴が潜んでいる。欧州の海底は大陸棚で堆積層が広がる。対して、日本の海底は堆積層や岩盤が混ざり合う複雑な地質構造になっている。いざ建設工事に取り掛かってみたら、岩盤にぶつかり杭が打てないという悲劇が起きて、場所選びからやり直さなければならない場合もある。

 やり直しはコスト増に直結し、プロジェクトそのものを脅かす。洋上風力発電プロジェクトにかかる費用のうち、建設工事費が全体の4割近くを占めるからだ。

「基礎を制する者が洋上風力を制する」。福岡県北九州市沖の響灘で洋上風力発電プロジェクトを手掛ける九州電力の子会社、九電みらいエナジーの寺崎正勝取締役企画本部長はそう断言する。

 同社は洋上風力発電プロジェクトを手掛ける欧州の大手発電事業者と連携を深め、ノウハウの獲得を急いでいる。その経験から、詳細な海域調査の重要性を寺崎氏は訴える。

 では、海域調査の現場はどんな場所なのか。響灘で行われた海域調査に密着した。