プレゼント、記念、自分へのご褒美に。特別な瞬間に手に入れたいジュエリー。高額だからこそ、失敗したくない! 自分らしく似合っていて、長く使えるものを選びたい。けれど、いったい何を、どこで買えばいいのかわからない……。そんなジュエリー初心者のために、選び方や、素敵に見える着け方のコツ伺いました。教えてくれるのは、ファッション業界の、おしゃれ上級者たちも憧れるジュエリーディレクター・スタイリスト、伊藤美佐季さん。その美しいスタイリングと、本当に良いものを見抜くセンスは、「伊藤さんが選んだものが、次に流行るジュエリー」と言われるほど。本連載では、著書『そろそろ、ジュエリーが欲しいと思ったら』の中から、そんな伊藤さんのジュエリー論をご紹介していきます。
「どんなに辛い時も、
朝起きたらまずピアスをひとつ」
憧れの人の言葉を忘れない
現在の私のジュエリー観は、多くの人からの影響を受けて成り立っています。中でも私が特に強く影響を受け、「ジュエリーとは何か」を学ばせていただいたのが、ボン マジックのオーナーデザイナーだった白井多恵子さんです。
潔いショートカットに、赤珊瑚や、色とりどりの色石のネックレスを幾重にも重ね、そして笑顔はいつも圧倒的なほど美しく、エネルギーに満ち溢れた人。その卓越したセンスはひとことで言うと「日本人離れ」していました。私は、そんな彼女にどれほど憧れたかしれません。豪華でありながらも、彼女の作るジュエリーにはどこかユーモアが感じられるのも魅力でした。
彼女の言葉の中で、今も強く心に残っているのが、この言葉。
「どんなに辛く苦しい時も、朝起きたらまず、好きなピアスをひとつ着けましょう」
ハードな撮影が続いて顔色が冴えない朝、気持ちが落ち込んでいる朝、私は今も彼女の言葉を思い出して、お化粧よりも先に、お気に入りのピアスを耳に着けています。するとなんだか体の内側からエネルギーが湧いてきて、ジュエリーの持つ力を実感できるのです。
お別れしてから10年経った今でも、白井さんの言葉に励まされ、日々元気に過ごせています。
ボン マジックのパールジュエリーは私にパールの楽しさを教えてくれました。バロックパールなど、華やかなパール使いを教えてくれた先代のオーナーデザイナーの白井多恵子さんから「美佐季さんに似合うわよ」とすすめられたのがこのネックレス。大きさも色あいもバリエーション豊富な白蝶バロックパールが連なり、シンプルな黒タートルや、プレーンな白シャツなど、ベーシックな洋服に映えるお気に入りの1本です。(伊藤美佐季さん私物)
2019年も、今日で最後です。この連載を通して、少しでもジュエリーに興味を持っていただけましたか。ジュエリーは、極論するとあってもなくてもいいものなのかもしれません。ですが、特別な時にだけ着けるものではなく、「自分らしくいられる」「毎日着けられる」日常使いのジュエリーは、私たちの人生に、奥行きをもたらしてくれるひとさじのスパイスであり、同時に、長く共に生きる伴侶のような存在でもあると思うのです。
ジュエリーが好きな方も、まだジュエリーを買ったことがないという方にも、この連載と、そのもとになっている『そろそろ、ジュエリーが欲しいと思ったら』を通して、おしゃれであってこれ見よがしではない、自分の存在を効果的に引き立たせてくれる、「自分だけのジュエリー」を見つけていただければと思います。
本年は、大変お世話になりました。よいお年をお迎えください。