「若手がなかなか育たない」、「OJTが機能しない」と言われますが、それは若手自身のせいというより、職場の環境が変わったことによる影響が大きい、というのが前回までの内容でした。そこで、変化の大きさとその淵源を考えるために、20年前との違いを描き出してみたのですが、今回は一気に時間を飛ばして、いま現在の話を書きます。「人事の無茶振り」が若手に無用な圧力をかけているのではないか、というお話しです。(ダイヤモンド社人材開発事業部副部長・間杉俊彦)

天才と比較されては
若手もやってられない

 「わが社が求める人材像は……」。採用でよく聞かれるコメントですね。

 ここに最近、ある傾向が見て取れます。

 具体的に言うと、「わが社が求める人材像は○○○」の○○○のところに、ある固有名詞が入るのです。それも特定の人物名を挙げる採用担当者が、激増しています。

 もったいをつけるまでもなく、タイトルからバレバレなのですが、それはプロゴルファーの石川遼くんです。

 高校生にして賞金王。いうまでもなく天才プレーヤーです。石川遼くんが素晴らしいのは、そのプレーだけでなく、マナーであり、言動であり、もう非の打ちどころがない感じがします。

 インタビューでの堂々たる受け答え、その言葉の含蓄の深さ、とても17歳とは思えません。というより、ミドルの読者諸賢、あなたにああいう受け答えができますか? 私にはとうてい無理です。

 自分のことはいいとして、「うちの息子とはえらい違いだ」とため息が出ます。もちろん、息子にそんなことは言いません。言っても仕方がないことですし、息子には息子の良さもある。「世の中にはすごい若者がいるものだなあ」と、感心するだけで十分です。

 「わが社が求める人材像は石川遼みたいな若者」。それがただの冗談であれば、ここでまじめに取り上げるまでもありません。

 しかし、どうも、あながち冗談ではないように見受けられるのです。