「今年の新人はイマイチらしいな。□□事業部の▽▽くんが嘆いていたぞ。来年はもっといい人材を取れよ。そう石川遼くんのような若者をな」

 こんな会話が社長と人事部長との間で交わされている、ということはないでしょうか?

 繰り返しますが、即戦力のスーパー・ルーキーなど現実にはいない、ということを人事担当者ならわかっています。それがわからず過剰な期待をかけてしまうのは、経営者であり、事業部長であり…

 つまり、現場で人材育成を担う多くの人がそのようなイメージを抱いているとすれば、若手はたまったものではありません。

新卒採用の「即戦力指向」が
若手を育ちにくくさせる

 石川遼は、時代の偶像です。

 ある紳士服量販店チェーンはCFで、石川遼をイメージ・キャラクターに起用しています。リクルート・スーツのCFです。

 つまり、世の中全体が、「理想的な若者像」を石川遼に見出しているわけです。

 就活中のある学生は、「とても違和感があります」と感想を述べます。「石川遼と比べないでくれる?と言いたいですね。そもそも私たちより年下だし。劣等感を覚えますし、やる気が下がりますよ」

 新卒採用が「即戦力指向」になっているというのは、ここ数年、指摘されることです。語学能力やコミュニケーション能力、ロジカル・シンキングetc…。

 しかし、私たちはみんな知っています。大卒新人がビジネスの即戦力などになるはずがないということを。ビジネス能力は、実践を通じてしか身に着かないものです。いかにポテンシャルが高い人材であっても、例外はないでしょう。

 2―6-2の法則とよく言いますが、上の2の、そのなかでも一番上の選りすぐりのエクセレント層。石川遼の比喩が指し示しているのは、そこを狙い、そこしか戦力にならない、という思い込み、なのではないでしょうか。