来年4月、賃金や手当、福利厚生すべてについて、正社員と非正規社員の格差を埋めようとする同一労働同一賃金関係2法が施行される。これに伴って正社員の手当を削減するのは良いが、それを実質賃下げで終わらせるのでは本末転倒だ。人件費総額を保ったままで同一労働同一賃金を実現すべきである。(久留米大学商学部教授 塚崎公義)
手当を廃止して全社員へ平等に分配すべき
同一労働同一賃金関係2法の施行を前にして、格差是正のために正社員の家族手当や住宅手当の縮小を始めている企業もあるようだ。
筆者は昔から、サラリーマンに対する「手当」には疑問を持っていた。「会社に対する貢献度合いは同じなのに、専業主婦がいると、遠くから通っていると、借家に住んでいると、手当がもらえる」のは合理的でないからである。
「会社は家族だから、専業主婦を養っている、遠くから通っている、借家暮らしをしている、かわいそうな仲間には手厚く手当を出してやろう」という親心は、理解できないわけではない。しかし、「都心の会社に勤める独身サラリーマンが、通勤時間を惜しんで都心近くの高価なマンションを無理して購入して住んでいるケース」との公平が保てているようには思えないのである。
そこで筆者は、こうした手当を廃止して、全社員(サラリーマンのみならず非正規労働者も含めて)に平等に分配すべきだ、と考えている。
もちろん、手当をすべて否定するわけではない。たとえば社命で単身赴任を強いられているサラリーマンに単身赴任手当が出るのは当然だからである。何事にも、例外はあるのだ。