会社という幻想ではなく、働く「個人」から見える真実

――会社のホームページや、社長や従業員のインタビューなど、外部に向けた情報は参考にしてもいいのでしょうか。

雑誌やインターネットに載っている情報は、必ずしも事実とは限りません。デザインや構成や原稿チェックの段階で、実際に話した内容とガラッと印象が変わることがよくあるので、ほとんどあてにならないと思ったほうがいい。多くの場合、会社にとって都合が悪い話は削除して、いい話しか外に出しません。テキスト化された情報はいくらでも嘘をつけますから、真に受けないことが大事です。

ただ、動画は別です。動画は嘘をつきませんからね。僕も、『OPENNESS  職場の「空気」が結果を決める』で述べている「株価当てゲーム」をやっているときに上場企業の社長インタビューをYouTubeでたくさん見たんですけど、動画にはごまかせないものが映し出されます。

誰でも初対面の人と話していると、「この人はあんまり本音を言わない感じだな」とか、「なんとなく違和感を感じるな」とか、マイナスの印象を持つことがあると思います。動画のインタビューを見ていても、その人が話をしている時の表情や雰囲気や言葉の選び方などから、そういう嘘っぽさは伝わってきます。逆に「この人、本音でしゃべってるな」とわかる社長は、オープネスの3つの要素のひとつである「経営開放性」や「自己開示性」を重視している可能性が高いです。

終身雇用制度が崩壊して、人材の流動化が加速している中で、「人気企業のバロメーター」は確実に変わってきています。「会社」という形のない幻想よりも、そこで働く「個人」を通して見えてくる情報が、今後ますます重要視されると思います。