決して荒唐無稽な話ではない。今や地方空港はどこも国際便がある。韓国・仁川や上海から観光客が地方に直接来ている一方で、中小企業が商機を求めて海外に向かっているではないか。規制ばかりで縮み志向の東京の役人に、無理に付き合っていてもつまらない。成長著しいアジアなどの熱気に目を向けることだ。「遠い東京」よりも「近い外国」と一緒にもうけることが、これからの地方分権の自然なあり方である。

 そして、さらに突き詰めていくと、今後は地理的な近接さすら関係なくなっていくのかもしれない。実は、「地方創生」で先駆的な事例が存在する。岡山県西粟倉村が行うICO(Initial Coin Offering)である。ICOとは、企業や団体がブロックチェーン上でコインやトークン(デジタル権利証)を発行し、その対価として投資家から資金を調達する方法だ。西粟倉村のICOでは、投資家に仮想通貨でトークンを購入してもらう仕組みを採用した。

 もちろん、仮想通貨に対する不信感は根強いし、西粟倉村の取り組みが実を結ぶかどうかは不明だ。しかし、青木秀樹村長は、日本経済新聞の取材に対して「国内外からお金を集められるICOの仕組みは魅力的だ」と断言している(日本経済新聞「自治体初のICO 岡山・西粟倉村、地方創生の財源に」2018年7月25日)。

 もし、さまざまな地方自治体がICOを行い、成功すれば、中央官庁が地方を財政的に支配できなくなるだけにとどまらない。中央銀行による通貨発行権が揺らぐ可能性がある。つまり、国家が存在する意義自体がなくなるということもあり得る(野口悠紀雄「仮想通貨は地方自治体の新たな財源になるか」)。

 また、ネットを経由すれば、地方の企業が東京を経由せず、直接海外市場にアクセスできるかもしれない。例えば、中国企業のアリババグループは、中国の地方都市に張り巡らせた流通網を日本企業に開放する取り組みを始めている。「LST」と呼ぶ販売プラットフォームで、600万店以上ある店舗への販路を提供するのだ。

 これまで、日本の地方の中小企業は、東京の大企業を経由するしか中国市場に参入する方法がなかった。しかし、アリババのネットワークを使えば、地方の中小消費財メーカーが、14億人の巨大市場に直接アクセスできることになるのだ(日経ビジネス「中国地方都市の流通網、アリババが日本市場に開放へ」)。